茶陶の工房、茶室<竣工3>

工房の設計にあたり、既存の作業場を採寸させてもらった。焼きものの工程は知っているつもりだったが、それを形にするまでの資材や細かい作業の流れ、使う機材や土の保管方法など、目からうろこが落ちるように実感させられた。

<茶陶の工房>

限られた空間を適切に使ってモノを納め、作業の流れに沿って収納し、工程に遅滞が生じないよう綿密に整えられている姿を目の当たりにして、何か神聖な、生み出す母胎への尊厳と美しさを感じた。ひとつひとつを作品までに昇華し、自らを投影して、いかに作品に語らせるか。歴代が積み重ねてこられた家業に対する重責と、ものづくりへの熱い情熱が痛切に伝わってきた。

これは私の認識の甘さだが、当初設計で見ていた換気量が足りず、試運転で不具合を起こした。窯に火を入れた温度はすさまじいもので、あまりの高温に驚かされた。もちろんすぐに改めたが、この火が真剣勝負の要諦なのだと認識を新たにした。

<2階立礼席、展示飾り棚を見る>

工房の2階には立礼席を設けている。奥行きの浅い床と床脇に加え、西側の壁面一面には、造り付けの飾り棚を設えて作品展示に充てた。立礼席の用途に備えて水屋も設け、向かう階段もアプローチと捉えて体裁を整えた。またここは、以前から続けている陶芸教室として使うことも想定しており、そのための流しや、ろくろなどの収納も設けている。

<立礼席を見る>

建物の高さ制限から階高が抑制されたため、少しでも高い天井高を確保するよう、鉄骨梁の掛け方を慎重に詰め、緩やかな船底天井とすることで、視覚的な高さを確保している。南側にはかつてからの庭が広がり、この2階から見ると緑が生き生きと映り、見晴らしも抜群だった。この緑は取り込まねばと初めから考えていた。敷地は山面を削った形で造成されていて、隣家とは擁壁で接するため視線に縛られないメリットもあった。

つづく (前田)