1階をパブリックな空間に限定し、対して2階を家族のプライベート空間としてまとめた。夫婦の寝室に子供室を3部屋、ユーティリティーを集約して構成している。
建物の南面した部分にバルコニーを通して設け、各部屋の開口部を大きく確保しつつ、吹抜上部の窓も自在に開閉できるようにした。そのため、日差しもさることながら風通しも申し分ない。建物本体から出した片持ち梁で、軽やかにバルコニーを張り出し、ステンレスの手摺で華奢に整えた。
<夫婦寝室から周辺の景色を望む>
夫婦の寝室はダイニングの上部にあたり、緩やかな片流れの屋根で構成する。内部は屋根裏を化粧で表し、南と西の矩の手にテラス窓を開くことで、周囲の景色を一望のもとに取り込む。
<洗面脱衣>
ユーティリティは十分な広さを確保し、2連の洗面ボウルを備えた洗面台に、各種物入とアイロン台を設けた洗面脱衣に、浴室が続く。北側の外部に向けては洗濯室を設けた。風致地区として景観を損ねることのないように、またアレルギー体質への予防措置も含めて、室内干しとして十分な大きさを確保した。近年、悩まされる花粉飛散に対抗しながらも、窓を大きく開け、屋根をポリカボーネード板として、風とともに日差しも招き入れる。
<洗面脱衣から洗濯室を見る>
建物外部のサッシには、全て外付けブラインドを取り付けた。上下作動も、羽の角度も電動で自在に調整でき、強い日差しを避けて通風を確保したり、羽の向きを変えることで周囲の視線も遮ることができる。温熱環境には特に優れた働きをし、コストもかかるが価値ある設備として選択した。
<展望台から周囲の山並みを見る>
竣工後にご夫妻の発案で、北側の山地に展望台が設けられた。写真撮影の時に上らせてもらったが、周囲の山並みから海までが望める格好の景色である。こうして自然と対話できる環境が身近にあることも、鎌倉の地としての魅力だろう。
<夕景の建物>
写真を撮りながら、コロナ禍の厳しい現場運営を思い出した。職人の手配や資材調達の困難さなど、工事関係者には多大な労力をかけた。加えて、打ち合わせも通常とは異なる方法を選択せざるを得ず、改めて建築を作るには、人と人とが会って話すことが大事なのだと痛感させられた現場だった。
竣工2年を経ての写真撮影となったが、お子さんの成長も見れ、日々この家で楽しく過ごされていることを聞くことができた。改めてこの仕事に携われたことに感謝している。
(前田)
追、HPのworksに追加しましたので、併せてご覧ください。