ダイニングは南と西の二方を庭に開き、リビングと一室空間につなぎながらも、アルコーブをもった独自の空間に仕立てている。近くにご両親の住まいもあること、また数多いご友人たちとの語らいの場として、広々としたスペースを用意した。キッチンの続きとなって、庭と繋げて使うことにも備えて配慮している。
<ダイニングから庭を見る>
ここに座ると、リビングとはまた異なった景色が迫る。周囲の小高い山々が放つ緑の表情や、濡縁越しに近くの庭とも手に取るように触れ合える。
家を計画するとき、外部空間との接点は、限られたものとならざるを得ない。その中において、住む人の視点を変えてくれる場所を多く持つことで、同じ空間に接していても異なる見方が生まれ、別の感情も芽生える。そのようなことを大事にしてこれまで住まいを作ってきた。魅力ある場所を、いかに計画するときに想像できるか、それが居場所を多く作るということに繋がるのではないかと思っている。
<ダイニングからキッチンを見る>
リビングの吹抜が上方へ抜ける開放感とすれば、キッチンからダイニングにかけては、伸び伸びと広がる水平感となって、互いに繋がりながらも、異なる展開で独自性を持たせている。敢えて天井高を抑えることでそれを強調し、平天井の羽目板も、杉の白太を選り分けて使うことで、目に立たないように整えた。
<吹抜上部からダイニングを見下ろす>
南庭に面するリビングとダイニングの外には濡縁を張り出している。庭はご夫妻の意向で作られたものだが、一面の砂利敷きに季節折々の草木が花を咲かせ、緑豊かに包まれていた。濡縁は、栗のナグリを簀の子状に張っている。ナグリは脚触りがとてもよく、視覚的にも体感的にも室内と外の庭を優しくつないで、一体感を一層高めてくれている。
つづく(前田)