扇ヶ谷の家<竣工2>

要望のひとつに、家族で一緒にいられる空間を大切にしたいとあった。そのため、1階をパブリックな空間に限定し、2階をプライベート空間として、各寝室やユーティリティを集約させ、それぞれの空間の充実を図った。敷地自体は十分な大きさだが、東西の寸法が些か窮屈なこともあり、南に向けて広がる土地形状を生かし、ダイニングキッチンを敷地なりに南に広げて配置することとした。結果、敷地の持つ利点を最大限プランに反映させられたようだ。

  <アプローチから玄関を見る>

アプローチに沿って、1台の車と自転車3台の駐車スペースを取り、アプローチを雁行させて玄関へと導く。奥まって玄関を設けることで、道路からの視線を避けつつも、地窓を設けて夜の帰宅時には玄関の灯りがこぼれるよう配慮した。玄関にはシューズクローゼットを併設し、利便性にも考慮している。

<玄関ホールを見る>

ホールを抜けるとLDKが広がる。2階までを吹き抜いた大きな空間で、南面の陽光を大きく受け止める。構造の木組みをあらわにして、杉の羽目板を一面に張った屋根裏は、この空間を一層ダイナミックにしたようだ。また、2階へとつなぐ階段を象徴的に見せることで、キッチンとの緩やかな分離も試みた。

<リビングから南庭を望む>

1階をパブリック空間に限ることで、南の庭が広く確保でき、庭の緑から周囲の小高い山並みまでが視界に入る。リビングに居ながらにして、周囲の環境と一体になれる爽快さは格別である。またリビングからは、裏山に通じる北側にも大きくテラスを張り出し、南と北の両方を外部に接させている。初めて敷地を見たとき、北側に山を背負うせいか、湿気を強く感じた印象からそのような提案をしたが、出来て見ると風が家中を吹抜け、常に内外が通じ合う、まさに風通しのいい空間となった。

<リビングから北テラス~北庭を望む>

つづく(前田)