上徒士町の家ー竣工3

玄関を入ると右手に和室を設え、その続きにLDKへとつながる。和室は客間としての要素もあるが、1階全体をワンルームとして、家族が時々の居場所を確保するための、ひとつの要素として設けている。

 <和室からLDKを望む>

ダイニングとリビングをL字型でつなぎ、庭に面する部分を大きなガラス面として整えた。市街地に建つこともあり、道路側は閉じて、内部で庭に大きく開いた。両親の家と、このリビングダイニングに囲まれた空間は、家族にとっての共有空間となる。開放的な広がりとともに、日差しの陽光と風とを、思う存分享受できる場所となった。

<ダイニングからキッチン、リビングを見る>

またこの庭は、前回記したように、両親の家との交流スペースでもあり、この場を介して、互いの家族の視線が行き交い、日常の中にさりげない触れ合いが育まれることをねらったためでもある。2階までの大きな吹抜のガラス面は、庭はもとより空に浮かぶ雲さえも、居ながらにして取り込むことができる。

竣工前に終日滞在したが、市街地とは思えないほどの静かでゆったりした時間を感じ、内外の境界が取り払われたかのような解放感にしたった。また、ダイニングとリビングをL字につなぐことで、それぞれの居場所が鮮明になり、触れる外部の見え方が異なるせいか、より空間が立体的に感じられた。

<キッチンからダイニング、庭を望む>

ダイニングとリビングをつなぐハブ的位置にキッチンが座る。日ごろ仕事をされている奥様が、家にいるときは常に家族と会話しながらキッチンに立ちたいとの要望からこのレイアウトとなった。キッチンを囲むように壁面収納を設けるとともに、キッチンの背後には家事スペースが集約されていて、家事動線の効率化も図っている。

(つづく)

前田