計画にあたって思ったのは、既存に建つ両親の家と、この度の家をどうつなぐかだった。それは家族の距離感の問題でもあり、日常を送る中でどのような交流が相応しいかということを探ることでもある。敷地は東西に長く、よって南面する敷地も長く取れることから、そこを利用すべきだと思った。
都市中心部であることを考えると、家にいながら、いかに有益な外部空間を設けられるかが課題でもある。それは、内部空間の居住性を向上させるのはもとより、その空間を充実させることで両家をつなぎ、日常的な交流と家族の成長を育める空間として展開させたいと考えた。
<アプローチから両家をつなぐ外部空間を見る>
家に対する要望を聞いて計画してみると、リビングダイニングから繋がる外部空間が思ったより大きく取れ、また両親の家との接続環境も、良好に構築できそうだと分かった。早速、初回の平面提示でその意図を伝えたところ、施主夫妻もその考え方に大いに賛同してくれ、その前提に計画を進めることとした。
<両家をつなぐ外部空間の見返し>
この外部空間は、もちろん内部空間より見つめられる庭としての要素もあるが、両親の家の玄関に通じるアプローチとしての側面も兼ね、なおかつ両家が集うための「つかう庭」としての意図を含んでいる。普段の暮らしの中に、静かに互いの家族の視線が感じられ、それでいて、けして互いの暮らしを邪魔しないプライバシーも保たれる。
将来、両親の家を子供が住むことになったときでも、こうした距離感が、家族が暮らす上でも相応しいのではと考え提案した。特に両親の家は、同一敷地内にあって一段高い位置に建っていることから、その分、視線も穏やかに交われるのではと目論んだ。
つづく
(前田)