かまぼこの里「千世倭楼改修 2」

もともと大きな建物であるため、3つのエリアに分けて店舗を設けた。
店ごとに3種類の看板を出すのも不自然であることから、店の前に大行灯でそれぞれを示し、入口を大きく広げて来る人を迎えた。
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              <改修した入口回り>
正面を、ギャラリー&ショップ「千恵」として、暮らしを支える道具などを中心に展示販売する。
建物の大きな吹抜を利用した大空間は、使われている木材の大きさもあって豪壮な趣が漂う。正面の明かり障子と側面の壁で囲われた空間だが、屋根裏まで吹き抜かれているため、圧迫感なく向き合える。
季節によって、展示内容や販売商品も変えられることから、融通が利く什器も設えた。
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           <ギャラリー&ショップ「千恵」>
入って右側に向かうと、名水喫茶「且座」が広がる。
この地は、鈴廣が水を求め、かつて小田原市内で営んできた店を移転してきた場所である。かまぼこづくりには欠かせない水だが、この水の良しあしがかまぼこの味を左右するという。箱根の山々からの伏流水がこの地で出たことが移転を決断させた理由でもあり、この水を「箱根百年水」と命名し、かまぼこづくりはもとより、この里内での料理や飲料水として用いられている。
その水の美味しさを実感してもらいたいと、この店を作るに至った。
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              <名水喫茶「且座」>
入口正面に設けたカウンターには、へっついを設けて、ここで百年水の水を沸かし、茶を炒って供する。
周囲の庭を望みながらのひとときは、まさに里ならではのゆったりとした時が流れる。ここも天井が大きく吹き抜かれていて、上部からも日差しが注ぐ独特な空間として、来る人を迎えている。
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             <且座店内から庭を望む>
古い建物を改修するにあたっては、作った人の思いにまで踏み込まねばといつも思っている。改修にあたっては実測が不可欠だが、実測を通して、使われている寸法やモジュール、木を使う技術や材料を選ぶ目、またそれらを基に、どういった基準で建築を考えていたのかが読めるようになる。
それは故人と会話しているがごとくで、真剣ながらも楽しい時間である。
木の建築は、こうして歴史を経た今なお、語りかけてくれるのである。
そうしたことを大切にしながら、今回も思いに触れさせていただいた。
(つづく)
  (前田)