慧然寺境内整備<竣工4.>

玄関を上がると、取次をかねた大廊下に出て各所へと結ばれる。
天井には幅2尺、長さ7mの杉の中杢板を布張りとし、床板は赤松の幅7寸ほどを1寸の厚みで張っている。2階の床高をなるべく低く抑えて外観に反映させるため、要所に2階の床を支える梁を現してまとめた。

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             <大廊下を寄付に向かって見る>
入ってすぐに、この応接間がある。
通常の来客接待に使われる部屋ということもあって椅子式とした。大廊下と同じ床板を張り、天井には杉の柾目を底目に張り、底目に煤竹を挟んでアクセントとしている。小さな床を構え、中庭に接する。
椅子をはじめ、家具はいつもの村山千利に依頼した。少し華やかな感じがいいだろうと、和尚と相談して赤溜めを使ったが、案外評判がいい。庫裏という性格上、建築として目に立つ造形は控えたので、こうした色遣いが空間を引き締めてくれる。
座して見るよう雪見障子のガラスの高さを整え、中庭の緑と、その先の主庭の緑が重なって目に入るようにした。都心近くの場所柄ながら、別世界を感じさせる。

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                 <応接室を見る>
庫裏として必要な部屋を連ねると、どうしても建物中心が暗がりになる。
それを避けるために中庭を挟んだ。10畳ほどの広さだが、この中庭があることで光が各所に注ぎ、風が吹き抜ける。またこの中庭を設けることで、外来者の動線と、内向きの居住空間を分けている。
中庭の廊下は屋根裏を見せた作りとして、本堂からの廊下につなげた。
既存の本堂との接続が要で、玄関から入った人が違和感なく本堂へと誘われるようにするため、動線を単純にし、しかも本堂の床高にあわせて結ぶことで、来る人の負担を軽減することが課題だった。

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              <大廊下から中庭を望む>
本堂と、新築した庫裏の間を耐火建築物で区画することで、基準法上別棟として成り立たせている。延焼ラインや、本堂軒裏の防火構造への改変、防火戸の納まりなどが、建築として目立たぬよう納まっていないと、小さな空間だけに破綻しかねない。
さまざまな法規を活用しながら、計画における最適な解を求める作業も、設計時に平行して行った。

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               <既存本堂へと続く廊下>
既存本堂の地下には斎場が設けられており、そこへアプローチするエレベーターの設置も要望されていた。そのため、この耐火構造の中へそれを入れ込み、地下へと降りる階段は既存を利用した。
ただ、既存の高さがかなり低く、それをいかに新築と接続させるかが大きな課題だった。そこで、この区画を逆に利用し、耐火建築物と新築の木造との空隙をうまく使って坪庭を設けることで光を取り入れ、どこにも閉塞感が生じないようなプランを模索した。

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             <地下へ向かう階段横の坪庭>
(つづく)
  (前田)