福聚寺庫裏<桜咲く>

寺院の仕事が続いている。
これまで寺院の仕事などなかったのだが、続けざま飛び込んできた。先日の東京深川は漸く引き渡しを終え、ホッとするも束の間、福聚寺が佳境に入ってきた。

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         <観音堂から見る境内 遠くに枝垂桜>
福島三春にある臨済宗妙心寺派、福聚寺という。
すでに拘わってから4年になる。
私が赴くまでに、施主側でかなり紆余曲折があったらしく、和尚や奥さまも少なからず疲弊しておられた。そこから設計の打ち合わせが始まり、ようやく昨年から工事に掛かりだした。
現場は屋根が葺き終わる頃で、内部の造作に掛かりだしている。
三春といえばご存じの方も多かろうが、樹齢1000年ともいわれる天然記念物の”滝桜”がある。この間、三春に通ってはいるものの、実はまだ現物を見たことがない。
勉強不足は否めないが、今年はその満開の桜にぶつかった。

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        <本堂から工事中の大玄関、庫裏を望む>
福聚寺は戦国大名田村氏の菩提寺であり、田村氏三代の墓所がある。
かつて田村氏が三春を訪れたとき、満開の滝桜を見ていたく感激したという。周辺の住民に、租税の変わりにこの桜の御守りを申しつけ、桜が咲いたら江戸まで早馬で知らせよとの布礼も出したらしい。
田村氏を祀る観音堂が、福聚寺境内の高台にあるのだが、そこから望む大きな枝垂桜がある。塔所からこの満開が望めるようにと植えたものであろうか。
この桜が滝桜の別れ第一号で、450年の樹齢と聞く。もしかすると、愛姫の生誕を祝して植えられたのではないか、と和尚はいう。
その桜が満開だった。

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          <一面の桜に庫裏の屋根を見る>
境内には、そのほか桜がさまざま植えられ、今が盛りと咲き誇っていた。
今年は桜を観れずにと嘆いていたところ、図らずも現場打ち合わせの傍ら、ひとときの春を満喫した。
現場の状態はまた追って紹介するが、三春の遅い春のお裾分けまでに。
  (前田)