伊勢から福岡、また東京に戻って打ち合わせの後に小田原へ。
席の温まる間もないが、気持ちは充実しているようだ。
新たな仕事の依頼も入ったりと、そろそろ来年の仕事の段取りを考える候となってしまった。
<玄関から取次を見る>
南部の家の続きを。
玄関は式台を構え、取次の正面には床を設けた。奥さまがお花とお茶をやられるていることもあって、季節の室礼が出来るようにと思ってのことである。式台には厚さが3寸あるケヤキを用い、束を立てずに板で持たせている。
天井は駆け込みの勾配天井とし、床は敷き瓦を四半敷きとした。
和室主屋の屋根と玄関屋根が絡む場所から、平面の取り合いにずれが生じるため、その箇所に飾り棚を配して調えている。赤松皮付き丸太に、栃の天板を取り合わせた。
ここは客用の玄関で、家人は通常、内玄関から出入りする。いわばもてなしのための玄関であり、取次のここに座して客を迎える。
<取次と飾り棚>
取次から和室入側に出ると、一気に庭への視界が開ける。矩の手に巡る入側からは、奥行きある庭を望め、視界はさえぎることなく広々と開放される。
和室は8畳として、床と琵琶台を構える。書院は玄関からの静かな光を招き、床前に座す客からは、濡縁越しに庭が一望となる。
柱は北山丸太にツラをつけた面皮に作り、天井は地元の杉から木取った中杢板を張った。長押にも北山丸太を使うことで、柔らかな佇まいを求めた。琵琶台は天然杉の中杢板一枚もので、少し色を差して整えた。地域に建つ建築ならば、少しでも地元の材を使うことが、その地の大きな自信となる。
<入側から庭を望む>
<和室8畳、床を見る>
和室の前まで池を近寄せ、池上に張り出すよう濡縁を張った。栗板の簾の子縁とし、低い手摺りを回す。ここに座して庭を見ると、滝の音が心地よく、せせらぎの流れがそれに呼応するよう耳朶に響く。写真はまだ張り立ての苔だが、今では青々と庭面を柔らかく包んでいた。
<濡縁から滝口を望む>
(前田)