昨日京都に行っていたが、ものすごい暑さに閉口した。
梅雨の晴れ間ともなると、真夏の日射しがたたきつける。
毎年のこととはいえ、年々暑さが堪えるようになった。
串本の町家の続きを。
<みせへの入口>
駅側の正面にみせを、裏に厨房棟を建て、中庭を挟んで両棟を繋いでいる。
間口が小さいことから、立ちが高くなるとバランスが悪くなるのと、町家ならではのおとなしさを保つため、なるべく桁高を低くして納めた。
みせへのアプローチは露地を通って、というのが要望で、ここでは明るい入口となるよう南側に露地をつけた。この露地は裏の厨房にも続いており、主客が使う動線として機能する。
折角露地をつけるなら、それらしい雰囲気をと絵にしたが、描いたとおりの仕事で応えてくれた。
<アプローチを見る>
計画は順調に進み、実施図面も予定通りに上がった。
その後、現場説明を経て数社に見積もり依頼をしたのだが、これがなかなか決まらない。どうしても予算を上回る金額しか出てこない。
私も長年やっているので、さほど予想が外れることはないのだが、今回だけはどうしてか納まらない。聞くところによると、串本は半島の先端だけに物流が途中で一旦止まり、そこから新たに運搬するとあって、工事費が高くなるらしい。
またお商売上のことや友人関係もあって、さまざまな人に見積もりを依頼したため、決まるまでに一年掛かってしまった。
結局は、熊野の方に紹介して貰った地元の小寺工務店が引き受けてくれ、無事な完成を見ることができた。小寺社長の拾い出しは的確で、図面をよく理解してくれ手際よく材料を纏めてくれた。こうした木造建築を長い間やってきた自信がうかがえ、また話す言葉遣いの丁寧さに私も信頼を深くしてきた。
<アプローチ見返し>
串本は海が近いとあって、土中2mから岩盤となる。
浄化槽を埋め込まなくてはならないこともあり、実はこれが見積上もネックになった。周辺に家屋が迫っているため土留めも大変で、何より機械では掘り進めないため、人力に頼らなくてはならない。
現場監督の田代さんが発憤してくれ、潜函工法で掘り進めながら矩体を納めてくれた。周辺にトラブルを起こすことなく工事全般を導いてくれた、田代さんの力量も見事なものだった。
(つづく)
(前田)