串本の町家<完成間際>

正月明けに風邪を引いたこともあって、出張を延ばして、新たな計画や現場の建具図などを籠もって書いていたが、気付けば本調子に戻っていた。
まだ待たせている人もいて、早く掛からねばならないこと山積みである。
今年もこれで始まった。

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                 <駅前から見る外観>
先日串本に行って来た。
岩盤掘削の浄化槽を埋めることから始まった現場も、漸く終盤となり、胸の支えも軽くなった。串本の駅から正面に見えるため、電車から降りると、たちまち進捗が理解できる。
既に足場も取れ、建物の全貌があらわになった。
小さな町だけに、伝わる速度も速いようで、それぞれに評判も上々のようだ。旧市街には、こうした古い町家建築も若干残ってはいるが、この地でも絶えて久しい建築なだけに、否応なく目に立つのだろう。
大工棟梁の山本さんも、やっと肩の荷を下ろし掛けたようで、表情が軟らかくなっていた。これまで図面と相当格闘したらしい。若干の細部が残っているものの、思った納まりと食い違う箇所はない。塀にも掛かりだして、いよいよ終盤も大詰めを迎えた。
建具もあらかた入って、ご主人の友達と聞いた建具職人も、図で示した通りの仕事で応えてくれた。左官屋も外回りの漆喰がほぼ終了し、軒内の洗い出しに掛かっている。敷地内排水が少なく、水を多く使えないとあって、表面の水をうまく採りながら慎重に打っていた。
こうした伝統的な仕事も他では少なく、仕事自体がこれから伝えられるのだろうかと、職人衆が嘆いていたのが印象に残る。

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                    <外観見上げ>
庭師とも最終の打ち合わせをし、思うさまは伝えてきた。
並みいる職人の目がとても綺麗で、みんな熱く仕事に集中してくれている。
3月初旬の完成まで、もうあとわずかである。
良い現場になるに違いないと確信して串本をあとにした。
  (前田)