年の瀬を迎えて

今冬は殊のほか暖かく、師走気分に全くならない。
とはいえ、残す日もわずかとなり、次第に年の瀬となった。
各地で仕事納めと称して忘年会が続いてきたが、みなと笑って呑めるのであれば、今年一年良かったと思わねばなるまい。

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              <五十鈴茶屋本店 椅子席内部>
一昨日竣工した、伊勢おはらい町の五十鈴茶屋本店である。
35年前の建物を椅子席にリニューアルして、この25日に新装開店を迎える。
写真はまだ工事中のものだが、この話自体は15年前からのもので、これまで随分と絵を描いてきた。その意味でも私自身感慨は深く、五十鈴川を望みながら対岸の朝熊山を眺めていると、この地で仕事を続けてきたこれまでが彷彿とされ、有り難さでいっぱいになった。
今年も忙しい一年だった。
2ヶ月おきに実施設計を挙げ、その間を縫って現場の打ち合わせとあって、めまぐるしく動いた一年だった。今年書いたものが来年の現場になっていくわけだが、依頼された建築を作るというより、人との繋がりを濃くしていく中で、それが醸成されて建築になっていくといった仕事が多くなってきていて、改めて人との巡り合わせに感謝している。

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                   <茅葺きの家>
茅葺きの家も11月に竣工し、順調な滑り出しを迎えている。
先日、現場の関係者を集めて、ここで一夕みなと杯を上げた。自分たちが精魂込めた建築で飲み交わすのは格別で、時を忘れて過ごしてきた。
小屋組の迫力と茅葺き独特の軒裏のテクスチャは、日本建築の美しさを能弁に語るもので、それが夜の照明に照らされ、一層妖艶な美しさを見せていた。
年明けから、写真を通して紹介していこうと思う。
年明けには南部の家も最終の仕上げとなる。
表門や中門、塀の完成を待って、細部の庭のディテールを仕上げていく。
県産材を使った家づくりをテーマに県主催で6回の講座が行われていて、その最終回にあわせて竣工させ、この建築を見て貰いながら私の講演で締めくくりとなる。その意味でも気を引き締めて、完成させねばならない。
そのほか、八戸の住宅と、盛岡でも住宅の依頼があって、年内最後に土地を見に行き計画に取り掛かる。福島では、先日紹介した禅宗寺院の庫裏と大玄関、旦過寮の新築があり、三重では四日市の住宅、和歌山では紹介した串本の町家を完成させ、現在建築中の、伊勢おはらい町の伊賀組み紐の家、おかげ横丁運営の革専門店を竣工に導く。
そのほか新たな計画もあり、年明けからは、また気を新たに動き出そうと思っている。

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                <茅葺きの家 夜景>
来年もそれらの仕事をさせていただくが、まだまだ自分自身、発展途上である。
より自分を見つめ、少しでも信じるものを大きくするために邁進したいと思う。
本欄をご覧戴いた皆さまに感謝を申し上げ、来る歳もどうかご叱正を賜るよう、お願い申し上げる次第である。
  (前田)