南部の家<流れと池>

梅雨の長雨で、各所の現場も仕事が進まない。
それを良いことに、懸案の計画を纏めつつ、出張へと向かう日が続いている。
昨日も名古屋から小田原と打ち合わせを終え、来週からの出張に備えるため、一旦戻って朝から図面を睨んでいる。

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                   <滝口と流れ>
南部の家の庭も、石組みに掛かりだした途端、遅々として進まない。
建物から池の水面レベルを決め、そこから流れを遡って滝口の高さを決める。滝は1尺の落差で溜まりに落とし、そこから流れへと移っていく。
先ずは滝口とその周辺を固め、背景の樹木も併せて組んでいく。これが決まると、後は堰を切ったように周りに移行し、流れの護岸を組みながら、徐々に庭に地形が作られ、陰影が生じていく。
流れの中には落差3寸ほどの小滝を挟んでいき、この庭に響く水音を思いながら、石の護岸が際立たないよう、留意して組んで貰った。
東西に連なる部屋から眺められるため、視点ごとに異なる景色が展開するよう考えている。
石も樹木も、今のところは施主が集めたものを用いたが、派手なものがなくて良かった。何かが主張しすぎると、どうしてもそれに目が立ってしまって庭が浅くなる。
先ほどの石でもそうだが、目立たせないようにと石を据えていくのは存外難しい仕事で、庭としての出来上がりが頭で描けないと据えられない。庭師との意志疎通が大切なのはそういったところで、監理の腕が試されるところだ。
敢えて主役を作らず、全体の調和とリズムで庭を深くしたい。
果たして思い描く通りに出来るか、これからが正念場である。

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                  <南部の家 外観>
夏は植栽が行えないため、池の護岸を主に、もっぱら石組みに傾注したい。
まだ道半ばといったところだが、やはり庭は楽しい。
寸法に縛られないということもあるが、一瞬の感覚で勝負を決めていく潔さが、性分に合っているのかも知れない。
まだ紹介していないが、近くに建てた内舟渡の住宅が近々竣工するとあって、来週は楽しみが増えそうだ。
  (前田)