三重県建築賞を

今年は梅雨らしい日が続いて、傘が手放せません。
現場も予定がずれ込んでいますが、いま暫くは我慢の日々です。
蒸し暑い日が続いていますが、皆さま如何お過ごしでしょうか。

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                    <外観>
このたび、第34回三重県建築賞におかげ横丁北口棟が入選しました。
おかげ横丁は前々回のご遷宮を機に作られた街ですが、いまでは内宮門前町の顔となりました。伊勢という地を徹底して研究して作られた街は周辺にも多大な影響を及ぼし、界隈全体が大きなひとつの町にまで発展しました。
そのおかげ横丁が20周年を迎えるにあたり、周辺整備の一環として企てられたのが本施設でした。横丁の北端に位置し、市営駐車場から来る人を迎える場所です。
以前は横丁のインフラを支える施設がありましたが、今回の建物を作ることで、内宮参道のおはらい町通りとの新たな接続が生まれ、界隈の動線に大きなふくらみが生まれたと思います。

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                <2階への大階段を望む>
私どもに設計の依頼を戴いたのが、今から5年前。
計画ではそれらの現状を踏まえ、この立地と目的に沿うよう計画しました。
こうした日本に根ざした建築は、なかなか建築界で注目されることはありませんが、私どもはこうした建築も現代の建築と思って作っています。昔の形を模倣するような安易な造形とは異なり、日本に根ざした形を現代の目を以て構築し、この建築ならではの空間に昇華させたつもりです。
木組みの架構は臨機応変、どのようにもできる知恵が根底にあり、その柔軟さが木の建築を支えてきたのでしょう。それは意匠にも生かされ、架構を構成する部材や仕事、全てを包含して空間は形作られます。
一昨年の夏に竣工し、このご遷宮以来、多くの方が来られているようです。

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            <2階座敷からおかげ横丁を望む>
土地の建築を、土地に根付く知恵を生かし、その地の職人が作っていく。
伝統を受け継ぎ、風土に合った建築を作ることはけして古いことではなく、むしろ受け継ぐものの中から、新たな時代の鍵を見つける逞しさを持たねばならないと思っています。
ここが観光だけにとどまらず、この地の歴史を背景に、伊勢の生活や文化、風習を学ぶ窓口ともなればと願っています。
このたびの受賞を機に、これからも地域に根ざした建築を作っていこうと、思いを新たにしています。
 (所員M)
設計監理  前田 伸治
        暮らし十職一級建築士事務所
施 工    株式会社 高山建設
家 具     ヤマコー株式会社 村山千利
事業主    おかげ横丁 伊勢福