南部の家<庭仕事開始>

早や桜も三分咲きとなり、今日明日には満開を迎えそうだ。
何となく気ぜわしいこの季節だが、今年は珍しく家で過ごしている。
ここは桜の町で、天然記念物の蒲桜をはじめ、桜の名所には事欠かない。
久々に桜を楽しもうと思っている。

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            <和室棟から雁行して建物が連なる>
南部の家も仕事が進み、外部の足場が外れて全貌が現れた。大工の都合もあって、じっくり構えての工事だが、内部の造作もあらかた格好がついてきて、思うような姿を見せつつある。
寒い地方なので春はもう少し先だが、少しずつ庭を作り始めることとした。
気象条件もあって、植えられる樹種を見極めることから始めたのだが、寒さに葉が焼けてしまって、なかなか常緑樹が育たない。モッコクやモチノキといった、柔らかな葉を持った樹が使えないと知り、はたと困った。
落葉樹は問題ないが、冬に緑がない庭はやはり寂しく、針葉樹だけではさすがにきつい。
施主と一緒に各所の畑を巡り、樹木の交渉をしながらこれまで集めてきたが、少ない樹種ではあるが樹形を豊富に集めることで、個性を際立たせながら組んでいけるかと踏んだ。

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              <滝口周りを組みだしたところ>
東西に長い敷地を生かした間取りとしたが、各所から眺める庭と相まって、全体の空間を考えてきた。施主が長年の望みだった池と流れを中心に、それらを取り巻く庭を思い描いてきたが、いよいよ筆を下ろす段となった。
本来は三尊石を据えて滝口を整えていくが、大きな石組みでは南北の奥行きを圧迫するかと、些か省略しながら滝の背面を拵えて纏めてみた。
何といってもこれからだが、庭の指針を互いに共有しながらスタートが切れたかと思う。まずは流れの発端から作り始め、奥庭の樹木を入れながら徐々に景色を形作っていこうと思う。
庭といえどもディテールは重要で、ただ植えていては庭にはならない。その辺りの呼吸が大事なところで、これから夏前までに、およその格好がつけられるよう、督励していきたい。
  (前田)