年の瀬にあたり

歳末の出張を回り、各地で仕事納めとしながら酒席が続く。
やり残しや、失策などの悔いも残るが、皆と一緒の時間は心地よい。
年の瀬に気持ちが楽に感じられれば、まずは良しとせねばなるまい。
24日まではこのような状態が続く。

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                <現在進行中の仕事>
  
写真は事務所の我が机の前に貼ってある、現在進行中の計画である。
これでもまだその一部なのだが、こうして目の前にぶら下げて仕事をしていると、人参を見て走る馬のようだといわれた。
それもそうかと思うが、こうしていないと次の新たな構想が生まれない、というのも事実であって、自分をはき出さないと、次に移れない性分なのかも知れない。
先月末から書きだした実施設計を携え、先日納品してきた。
伊勢のおはらい町に建つ、伊賀組み紐の建物で、来春からの着工を目指す。おはらい町では続いてもう一軒の計画があって、これは年明け早々に実施設計に掛からねばならない。
界隈では、このほかにも大きな改装計画があったり、新規の計画が重なって続き、暫くはこの地での仕事が中心となりそうだ。
また、以前から紹介している茅葺きの家も、年明けから木材搬入、1月末から建て方に入り、2月末には上棟を迎えられるよう進めている。大工は刻みの真っ最中で、棟梁が頭を抱えて墨付けをしていた。なぐり目をつけた材料への墨が思うように描けず、登り墨に苦労しているようだ。

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           <茅葺きの家 梁をなぐって仕上げる>
昨年末に紹介した和歌山の工事契約が、漸く纏まった。
この一年、資材の高騰や職人不足から、なかなか請け手が現れなかったが、熊野の方からの紹介で、工務店を決めることが出来た。これで年明けから現場に掛かれると安堵している。
南部の家もそろそろ屋根が決まり、外回りの造作に掛かり始めた。
来春からは外構の庭も同時並行で進めていくことになるが、これも楽しみな建築である。樹木も主立ったものを集めに掛かり、少しずつではあるが構想が纏まってきた。こういうときが最も楽しいときなのかも知れない。
以前、盛岡で建てた家の増築の契約が先ごろ整い、来春から工事に入る。
音楽室を別棟で建てて繋ぐというものだが、全体を俯瞰しても、よりいい形へと導くことが出来たようだ。少し変わった形だが、木造でできる可能性も考えてみたいと思って書いた。
そのほか、千葉での新たな計画や小田原の仕事など、構想を纏めねばならない仕事も重なってある。仕事に追われると、つい手持ちの造形で湖塗しがちだが、自分の内なるところを日頃から見つめていないと、新たな考えが出てこなくなってしまいそうで怖い。
来年もそれらの仕事をさせていただくが、まだまだ自分自身、発展途上である。
より自分を見つめ、少しでも信じるものを大きくするために邁進したいと思う。
本欄をご覧戴いた皆さまに感謝を申し上げ、来る歳もどうかご叱正を賜るよう、お願い申し上げる次第である。
  (前田)