千葉W別邸<仕上げ>

今年こそ更新を滞らぬようにと、歳末に誓ったものの、既にこのありさま。
年々歳々仕事に追われるばかりで、自分の時間も全く取れないでいる。
年頭から書く予定の実施設計も、設備との取り合い調整に時間が取られたり、開発絡みで役所との協議が長引いたりと、思うように進まないことにも原因があるのかも知れない。

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                    <建物外観>
千葉の現場も、いよいよ最終の仕上げ段階に入った。
先月末からは庭師も入り、建築、庭園とも急ピッチで纏めに掛かりだした。
建物に接する周囲は庭と取り合う大事なところで、互いの領域を認めつつ、両者、切磋しながら仕事に余念がない。建物を覆う足場も徐々に外れ、次第に全貌が現れつつある。
建築も内法が入り、腰壁、天井も張れた。追っかけ左官が下地拵えに掛かり、建具も採寸が終わって加工に入り、設備機器も現場に到着した。

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                   <リビング天井>
リビングの天井には、桜を張った。
設計では別の樹種を書いたのだが、全体構成から見て、他の材料はないかと探していた。
南に展開する庭に面してダイニング、リビング、和室と繋がり、和室周りの濡縁は池に浮かぶ。アプローチから見ると池を奥に、手前に芝庭が広がるのだが、庭に合わせて計画したものの、庭の展開に建築を合わせるのが難しかった。
場所ごとに見える景色は無論のこと、動きながら移ろう景色にも注意を払って、間取りや開口を決めた。室内の意匠もそれらの展開に沿って考慮し、和室に向かうに従って真へと焦点を結ぶよう整えている。
意匠については別項に改めるが、リビングの天井材には悩んだ。
杉では和室とぶつかり、松は天井材としては不向き、雑木も考えたが適当なものが見つからない。
そんな折り、ふと立ち寄った九州で見たのが、この桜だった。
岩手の蒲桜で杢目もおとなしく、色味も淡い赤身で穏やかな表情だった。
「これは使えるだろうか」
と尋ねたところ、天井では使った試しがないが、何とかいけるだろうの返事。
早々に抑えて貰って加工に掛かってもらった。当初、薄挽きで削ったが、板が竪反りを起こして使い物にならない。幾度か試行錯誤して、6分の厚挽きで木取って仕立てている。もちろん桟も棟木も共材で木取った。
吟味したつもりでも、杢目の具合が気に入らず、現場に入ってからも2度材料を換えて貰い、やっと張り納まった。

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                  <ダイニング天井>
ダイニングは杉柾の網代市松張りに、和紙を裏打ちして張っている。
8畳ほどの広さだが、網代の幅を広くしたので、堂々とした風情となった。今回は京都で編んで貰い、2枚割りで現場に搬入したが、大工がうまく継ぎ目を編んで納めた。割付が心配だったが、図面通りに納まりホッとしている。
当初は玄関に網代をと思っていたのだが、施主から格天井にしたいと設計段階で要望があった。
堅くなるのを怖れていたが、それなら桐でいこうと、格縁を猿頬の細桟で取り合わせてみた。桐は2尺角強、これも京都で探したものだが、杢目の具合といい色味といい、程良い材料に恵まれ、穏やかに纏めることができたようだ。
来月一杯で建築を完成させ、次いで表門、腰掛けと仕上げていく。
庭との取り合いもまだこれからで、現場も日ごと緊張感が漲ってくるようだ。
屋根の銅板も次第に色が落ち着き、外壁も徐々に塗り上がってきた。
完成間際のいまが、最も楽しいときなのかも知れない。
  (前田)