千葉W別邸<屋根>

今年は紅葉も見ないうちに、秋が終わったようだ。
昨日千葉の現場で打ち合わせをして、今日からは、仙台の建て方前の打ち合わせで東北へと向かった。
車窓から見る山も雪をかぶり、空気が澄んでいるせいか山肌がくっきり見える。

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                <池端より建物全景を望む>
千葉の別邸も漸く屋根の姿が現れた。
今年は通過する台風が多く、素屋根の養生に手間取ったが、建物への影響もなく、この時を迎えた。周囲の庭を痛めぬよう、足場を組むにも慎重を期したが、何とかひとつの節目を越えたようだ。
南に妻を見せた寄棟の大屋根に、玄関から縁廊下、和室の入側へと下屋を雁行させている。軒を深く差し出し、庭を建物に招きながら、軒先低くして穏やかな佇まいを心掛けた。
それには下屋と大屋根が重なって水平に流れる線が勝負で、大屋根との段差を極力少なくし、薄く鋭く下屋を取り付けている。
そのため仕事としては、下屋の銅板を葺かないと大屋根に取りかかれず、時間が掛かるのは否めなかった。
雁行する下屋は小丸太の垂木を見せた化粧屋根裏で、裏板には杉の野根板を張った。

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                 <下屋の軒裏を見る>
日本庭園に建つ建築とあって、庭に面した外周を大きく解放している。室内からの眺めを妨げぬよう建具のプロポーションにも留意し、慎重に柱間を決めた。
軽々とした風貌が数寄屋の骨頂とあれば、自ずと柱も少なくなる。
そのため、外周の柱や丸太桁に大きく荷が掛からぬよう、本体の小屋組から、下屋の屋根裏に拮木(はねぎ)を入れて持たせている。

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                 <軒裏に入る拮木>
今年中に屋根の仕舞いをつけ、年明けから中の造作に掛かりたい。
先日、表門と裏門の位置を決め、庭園の全体像も固まってきた。
和室の式台を始め、若干の板類が決まりのつかないこともあって、続きに材料の検分に走り、早々に目処をつけたいと思っている。
 (前田)