弘前K邸(上棟)

帯状疱疹も漸く鎮まり、溜まった仕事に精を出している。
机に向かうのも久しぶりで、間が空くと資料を捜すのにも手間取ってしまう。
これから各地で相次いで住宅が始まることもあって、また出張が続きそうだ。
それでも気候のいい今の季節は心が軽い。

画像

                 <上棟時の打ち合わせ>
先日、弘前に建つ家の上棟式が行われた。
連休中から建てだし、順調に棟まで上がった。施主は3人の子供をもつ40代のご主人と奥さまの5人家族である。以前盛岡でお家を建てられた経験があり、また木の家が大好きなご夫妻とあって、建築への造詣が深い。ご主人は岡山の旧家のご出身で、木の家に慣れ親しんでいたせいか、木のことにもかなり詳しい。
初めてお会いしたのが昨年の2月下旬、思えばあっという間の一年だった。
依頼を受け、いざ設計を始めたのだが、成案に辿り着くまでが長かった。
互いに腹蔵なく意見を戦わせたが、肝心なところで感触が合わず、気づけば7案まで進んでいた。
確か青森で落ち合っての打ち合わせだったが、ご夫妻はこの案を少し直して貰えばこれで決めたいという。家としてはそれでもおかしくはないが、私から見ると要望を当て嵌めただけのプランで、今ひとつ気に入らない。
そこで、全てを白紙に戻して書き改めさせて欲しいと提案したのがこの家で、紆余曲折もあったが、やっと晴々した笑顔が見られた。

画像

                    <北側外観>
柱には地元の杉を用い、芯を外して赤身の柾目で揃え、大黒柱や隅の通し柱の6寸角も無事に木取れた。リビングの胴差を赤松にしたのだが、1,5尺成が取れる材料を探すのには苦労した。
工事は八戸の大山建工が担い、大工棟梁は新進気鋭の桜田君が任されることとなった。今までも現場で一緒になったが、無駄話をしない大人しい人柄と見たが、棟梁として任された責任からか、不安なところや各所の納まりを積極的に尋ねてくれる。先日も現場を見て気になったところがあったが、すぐ是正してくれた。
身のこなし軽やかに、意気込みに溢れていた。

画像

            <リビングから2階セカンドリビングを見る>
敷地は前面道路を挟んで南側に川が流れる自然豊かな立地で、遠景には雄大な山並みが連なる。
ご主人の職掌柄か蔵書が膨大で、リビングに続く2階にセカンドリビングを設け、書庫を兼ねている。このリビング回りから、それらの景色を一望しようと書いたが、果たしてどのような景色を見せてくれるか、今から楽しみにしている。
(前田)