先週末、東北を回ってきた。
むろん仕事でだが、桜は仙台が終わり、弘前が開花直前といったところ。
身体をむしばむ帯状疱疹はかなりしつこく、まだ痛みが去らない。
今ひとつ気分が優れないのは仕方ないことか。
<材料選定>
千葉で、とある別邸の工事が始まる。
1千坪の敷地に、池を中心とした日本庭園が展開し、周囲の喧噪をよそに別天地が広がる。中にある既存家屋を撤去し、新たに庭園に見合った建築を作ろうとする企てである。
庭の樹木も素晴らしいが、各所に点在する石や石像品も相当の代物で、今となっては到底手に入るものではない。それらの佇まいを見れば、いかにこれまで丹誠込めてこられたかは、容易に酌み取れる。
それに応えるため、建築は数寄屋を基調とし、周囲に馴染むよう纏めてみた。
とはいえ簡単には纏まらず、幾度か書き改めながら、いまの形に導いてきた。
多くの場合、庭は建築の後を追って作られるものだが、庭にあわせて建築を作るのは私も初めての試みだった。慎重に既存樹木とのバランスを考え、周囲との間合いを計ったものの、要望される規模と、庭園を整合させるのは至難だった。
<長ものの桁を見る>
先月から材料集めを本格化し、各産地に足を運んでいる。
主たる柱や内法材の杉は東北から、100年超の丸太を基に木取るつもりだ。赤身で目が詰んだものとなると、かなり太い丸太からでないと取れない。限られた時間で原木から調達しようとすれば、自ずと苦労は覚悟しなくてはならない。
丸太や小丸太は京都北山に求めた。
先日棟梁とともに選びに行ったが、時間足らずで全ての材は選び切れていない。
長さ36尺の軒桁は一本もので選び、4寸弱の柱の丸太は50年もので整えた。これぐらい年数が経つと、面皮に作ったときのツラの表情が綺麗にでる。
ただ困ったことに、垂木の小丸太が揃わない。
小丸太は北山杉を台杉と呼ぶものに仕立てて作るが、この台杉を生産する林業家が相次いで廃業しているという。
この建物も庭に面して入側を雁行させ、これを下屋として小丸太の垂木を見せている。この下屋だけでもざっと200本ほどの垂木を使うのだがこれが難しい。
何とか探す段取りをつけて帰途についたが、これからのことを思うと暗澹たる気持ちが拭えない。
銘木だけを集めるわけではないが、木肌の魅力は尽きることがない。
木を見ていると、つい時間が経つのも忘れ見入ってしまう。
北山もまだ真冬の寒さだったが、この環境が艶ある木肌を生む源なのだろう。
まだ暫く、材料集めは続く。
(前田)