おかげ横丁北口棟ー造作

各地で満開の便りが聞かれる中、伊勢の桜はまだちらほら。
早や3月も月末を迎え、慌ただしく毎日が過ぎていく。
実施設計に基づく工事契約が今月2件決まり、もっぱら材料調達の打ち合わせに割かれている。工事を見据え、静かな緊張に包まれるときだ。

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                 <工事中 中庭外観>
外観が現れてきたこともあって、道行く人も立ち止まって眺めていく。
下屋から葺いた瓦も今は大屋根に移り、8割ほどが葺きあがった。出入りのある屋根を、根気よく丁寧に葺き上げた山際君の、面目躍如たるところだろう。
鬼瓦は今回も三州の梶川さんにお願いした。まだ出来上がってはいないが、きっと凝った仕事で驚かせてくれるに違いない。
大工仕事も順調に進み、既に造作仕事に掛かりだした。
外回りの張出し手摺や戸袋周りも終わり、内部の内法、天井下地に掛かった。構造体が決まったことから、後は図面に則って一気呵成に加速することだろう。
虫籠窓も描き上げ、大階段の意匠も決めた。室礼の家具、什器、暖簾、看板などの微調整を昨日渡し、後は微細な色決定だけとなった。

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                  <2階 天秤梁>
場所がら周辺は木造家屋に囲まれているため、建物相互の調和を保つよう高さ寸法を調整している。現代社会が求める寸法に従えば、自ずと高くなってしまうところを、如何に抑えて馴染ませるかが腕の見せ所である。
桁高を極力確保しながらも、軒先を低く見せることで、違和感なく纏めている。
写真の天秤梁もその一例だが、こうすることで軒を深く差し出せ、高さも抑えることができる。大工には仕事だが、これも意匠を整える知恵だろう。

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                  <吹抜梁組>
屋根を閉じると、一層小屋組の架構が豪快に映る。
先般、京都の建築士会青年部が見学に訪れてくれ、感嘆していたと聞いた。
「柱がないこれだけの空間を梁組で持たせられるのか」
大層、興味深く見てくれたらしい。
伊勢も遷宮に向け耳目が集まるようで、先日は日事連の取材も受けた。
7月中旬の竣工に向け、これからが現場の山場である。
  (前田)