やっと福岡から戻ってきた。
2日の授賞式に続いて6日の発表会、7日の記念講演と、晴れがましい舞台でさまざまな人の祝福を受け、中には遠方から駆けつけてくれた方もいて嬉しかった。
改めて御礼を申し上げたい。
<道路から表門を見る>
このところ急に春めいてきて、桜の開花も間近に迫ってきた。
すでに三月も半ばに差し掛かり、気づけばあっという間だが、追われていた仕事もひと段落がつき安堵している。すぐにでも待たせている計画に取り掛からねばならないのだが、この暖気のせいか頭が働かない。
これは、昨年一年をかけて基本設計を固めた家で、これから実施設計に入る。
南部地方に建つ、夫婦の終の棲家である。
職人気質の社長で、一代でいまの会社を築き上げた。若い頃からの夢だそうで、池を望む庭に平屋の建物と決めていたらしい。
<中門を介して主庭を見る>
400坪の敷地に表門を開け、車を乗り入れるため、建物前には中門を設けた。建物は平屋とし、庭の池を囲むように雁行して諸室が連なっていく。
玄関から和室にかけては数寄屋を基調とし、リビングからダイニングは小屋裏を吹抜いた大らかな架構が生活空間を包む。木の建築の魅力を最大限発揮して纏めたいと考えている。
池には大きく濡縁を張り出し、庭を建物に引き込む一方、滝口を中心に、池に注ぐ流れが展開する庭を、各部屋から眺められるよう配置している。
建物に使いたい材料は既に伝えており、現在木材集めを先行している。
<中門から建物全景を望む>
本格的な着工は秋口を見込んでいるが、各種手配を考えれば早急に実施図面が待たれるところ。私が腰を上げるだけなのだが、なかなか動かぬ身体をこう書くことで自分を追い込もうという算段である。
先般、樹齢300年の天杉が手に入ったと報告があった。
どこに使おうかと考えながら描けるなど、まこと設計冥利に尽きる。
(前田)