千葉のとある別邸の実施設計に掛かっている。
漸く全体の矩計りを決め、外観内観とも意匠が固まってきた。
日本の良き形を数寄屋に求め、流れる屋根の佇まいを核に纏めてみた。
これで施主の諒承を得られれば、本格的に作図に掛かる。
<建て方開始>
おかげ横丁北口棟も、いよいよ建て方が始まった。
伊勢はここ数日穏やかで、天候にも助けられ順調に進んでいる。先週初めから土台を据え、柱から胴差と、順次組み上げている。
材料集めを除き、刻みだけでも5ヶ月が掛かり、さぞや棟梁も感慨一入だろうと尋ねると、堤さんも顔に似合わずはにかんでいた。
とはいえ、まだ片方の棟の途中で、200坪からなる建物ともなると、棟まで組上げるのに、優にあと2週間は掛かるだろう。
刻んだ材料を、倉庫におく期間が長かったせいもあって、収縮や歪みがどうしても出てしまう。大工もそれを見越して墨を打つのだが、なだめながら組んでいくのはひと苦労のようだ。
<左棟道路より望む>
建て方は、工事の中で最も華やかな場面で、通りがかりの人たちも必ず立ち止まって眺めていく。現場の周辺に空地がないため、加工場から順次必要部材を運び込む。仕口継手も建てる順番に沿って作ってあり、棟梁の采配が光るときだ。
棟上げは大工の骨頂で、10mもの梁が掛かれば、黙っていても歓声があがる。若い大工が叩く掛矢(かけや)の音が高らかに響くと、見ているこちらも血が騒いでしまう。
<階段吹抜周り>
立ち上がる姿を見るまでは、屋根の形は軒の高さはと、書いた責任が重くのしかかる。まだ一抹の不安は拭えない。
このまま天候に恵まれることを願うが、この13日が上棟式と決まった。
歳末までに、大屋根の野地まで仕舞いたいと、監督の小河さんも油断なく進捗を見守っていた。
(前田)