ある別邸の計画が纏まらず、難渋している。
1千坪の既存の日本庭園に嵌め込むのだが、なかなか思うようにいかない。
ホームページを見て依頼してくれた方だが、辛抱強く待ってもらっている。
もうひと息なのだが、できればいい建築になるだろう。
<四阿外観>
いま四阿(あずまや)を作っている。
地元のお茶の団体が、流派を超えて寄附を募り、市に寄贈しようと企図されたものである。ひょんなことから設計を依頼された。
もう完成間際で現在、外回りの造作と、壁の仕上に掛かっている。
予算も厳しいことから、角材で作ろうかとも思ったが、屋根をガルバリウム鋼板として金額を抑え、浮いた分で丸太を使うこととした。大工の手間は倍以上掛かるが、できてみれば丸太を使ったほうが美しく、馴染みもよい。
これに限らないが、余るほどの予算が与えられることはまずなく、私らも遣り繰り上手でないと、思った意匠はできない。
<加工場で垂木を合わせるところ>
青森の料亭で使う材料を選んだとき、この四阿の分も京都で選んできた。
磨き丸太は問題なく揃うのだが、档(あて)丸太や錆丸太がない。
档丸太にいたっては、昨年は1本も生産されなかったと聞き、改めて数寄屋界の厳しさを実感させられた。
垂木は桧の錆丸太(さびまるた)として、風雪への配慮から1.8寸径と幾分太めにし、押角に整えて使おうと思った。しかし、1.5寸径までなら揃うものの、1.8寸径はこれまた生産していないという。
需要が狭まれば、流通に乗る寸法も単純化されてしまうのだろう。
それでも、辻計銘木の辻さんが方々を駆け回ってくれ、何とか思う材料を揃えることができた。
竹や杉皮は、向日町の大塚竹材店で揃えた。初めてお会いしたが、昨年、私の伊勢の仕事で、すでにお手伝いいただいたらしく、世間の狭さを痛感した。
軒裏に張った杉皮も、半端ものを接いで使おうと思ったが、最上の品を送ってくれ、好意に謝して使わせてもらった。
<四阿内部>
16.5尺×9尺の小さな四阿だが、立礼の卓を持ち出して点前もできるように考えている。腰掛けに座って、気軽に一服してもらえれば幸いである。
完成したら改めて紹介したい。
(前田)