きざみ

ここ暫く籠もって書いた実施設計が、今朝おわった。
気力は充実しているつもりでも、年ごとに衰える体力の埋め合わせはできない。
先日作った老眼鏡を、掛けて書いた初めての図面だが、これぐらい裸眼で見えたのにと思いながら、机に向かっていた。

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            <作業場での棟梁らとの打ち合わせ>
おかげ横丁北口棟もきざみの真っ直中で、年末の上棟に向け、次第に熱が籠もってきた。梁の丸太も揃い、勢い小屋の墨付け、きざみに掛かりだした。
左右両棟それぞれ小屋の形態が異なり、それを繋ぐ階段周りの小屋がまた複雑なこともあって、大工も悪戦苦闘中といったところか。
3間半×4間半の無柱空間に、上下に重なる屋根仕舞が複雑に絡み合うところとあって、そう簡単には納まらない。それをダイナミックに、かつ整然とした美しさをもって組みたいと書いた梁組である。
梁の太さ、曲がり、素性を見ながら墨を打つのだが、何本もの丸太が交錯するため、梁の高さを決めるだけでも容易ではない。しかも水平に掛かる梁だけでないため、少しの違いが、離れた場所にまで影響を及ぼす。
棟梁の堤さんも頭を抱え、監督の小河さんもとても施工図には書ききれないと、今は慎重に確かめながら打つ墨を見守っている。

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                <伐りだした曲がり梁材>
材料も、ほぼ全数が集まり、曲がりある丸太梁も揃った。
丸太は杉材として、今回は栂と一緒に四国から入れてもらった。もちろん、予め伐ってある材でこのような曲がりはなく、図面片手に山に入り、頃合いを探して伐りだしてもらった。
こうしてみると、大した曲がりには見えないが、小屋にあげると思ったよりきつい曲がりになる。それでも矩計りで書いたように組めるかは微妙で、あとは大工の技量に委ねるしかない。
現場は、地下の堀方も終わり、ピット部分の配筋に移った。
地下水が出ないのを幸いに、工程も順調に進み、まずは安堵している。
これから書かねばならない実施設計も年末まで決まっており、休む暇はない。
その間隙を縫って纏める計画も数件あり、これも依って集中力の持続が鍵だ。
しかし、体質改善もママならず、何ごとも思ったように行かなくなった。
これも衰えのひとつだろうが、腰の痛みもまだ消えずにいる。
  (前田)