腰も漸く回復近し、昨日からリハビリの散歩を始めた。
娘に付き添われゆっくり1時間、心配したが今朝は快調に目覚めた。
この間、さまざまな人にぎっくり腰の体験談を聞かされた。
みんな腰では苦労しているのかと、こうなって初めて気づかされる。
<茶室三畳の床柱、档を見る>
この月初めに、青森の料亭の木づくりに行った。
まだ杖突きながら歩いていたが、現場の進捗を妨げてはいけない。
削り木は図面の寸法で指示できるが、丸太は選ぶ見立て次第で大きく異なる。框など、見どころの寸法が小さい材は、特に慎重に景色を選ばねばならない。
ここと見定めたところに墨を打ち、一本一本の材料を作っていく。
すでに加工場には、連休明けに京都で選んだ丸太が運ばれていた。選別するときに見ているので、迷うことなく取り掛かる。
部屋ごとに作っていくが、まずは床柱から始める。
節や表情を見ながら正面を決め、室内に現れる部分を吟味する。床框との取り合い、落とし掛けの位置、花釘が打たれるところを探りながら、最善の景色を選んでいく。茶室三畳の床柱には档(あて)を選んできたが、節の多いこの木をどのようになだめて使うか、といった楽しみもある。
茶室が多いため、床框もそれぞれ、えくぼや節のある材を選んでみた。
框は柱とは異なり、長さも、見え掛かりも少ない。節の多い丸太を選んでも、見え掛かりに入る節数は知れている。この中で、いかにその目で景色を取り出せるかが問われるところである。
ここぞと決めたら、丸み具合を均等に上下にツラをつけ、床柱との相性を見ながら、さらに使えるところを推し量る。ツラつけた天端を生地で見せる場合、隠れ節が出ることもあって、それらも見極めながら削らねばならない。
<赤松の筍ツラ>
档など節が多い木は、角度を少し振るだけで、別の丸太と見紛うほど豹変する。また、その節の落とし具合でも表情が変わる。落とすには刃物の切れと勢いが要で、一刀両断の潔さが木に命を吹き込む。切った傍から今にも汁がこぼれるような、鋭い小口に、木の生きざまを抽出するのだ。
丸太は、こうして人の目、人の手を経て、一層の輝きを増していく。
私などは未熟の域を出ないが、それでもこの一本のうちに景色を見つけ、それが思うように取り出せたときの喜びは大きい。
丸太から材料へと変わる瞬間は、いつも躍動を覚える。
(前田)