おかげ横丁北口棟

このほど、おかげ横丁北口棟が始まる。
はじめの計画図を書いてから2年あまり、ようやく着工の運びとなった。
暖めてきたものが形になるのは、素直に嬉しい。
このようなときに、少し治りかけた腰の、反対の腰をやってしまい、元の木阿弥で未だ杖を手放せない。暫く痛みと向き合う日々が続きそうだ。

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               <おかげ横丁北口棟外観>
伊勢も年追うごとに参宮者が増え、昨年は800万人を越えたと聞いた。遷宮を来年に控え、御正宮の普請も始まり、伊勢そのものが息するかのように高ぶりを感じる。
おかげ横丁も20年の節目を迎え、関係各位の尽力で順調な成長を遂げてきた。これまでも、時に合わせ小さな改修を行い、常に新たな気持ちで訪れる人を迎えようと、並々ならぬ労苦を以て支えてこられた。
一昨年、西入口に建てたおかげ横丁西玄関棟もそうだが、周辺を固めつつ、より強い意識で伊勢を守り、発展させていこうという、積極果敢な意志がその背景にある。

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                  <同 2階客座>
北口棟は、130坪の敷地に建つ木造建築で、延べ面積200坪を超える。
一部に地下もあるため大掛かりな工事となるが、工事は伊勢の盟友、高山建設が請け負うこととなった。先代の高山社長が亡くなられ、現岡本社長になって、初めてタッグを組む大きな仕事となる。五十鈴茶屋を建てたときの棟梁も他界されたが、我らの癖を知った大工らと、ともに仕事をするのも久し振りとなる。
近々材料をはじめ、棟梁を努める大工と打ち合わせをもつ。とても楽しみだ。
地下は鉄筋コンクリートで、基準法上混構造となるため、確認申請は適合判定審査に回された。この規模の建築では当然の流れになったが、法改正直後のことに比べると、随分とスピード感をもって審査が終了した。
木造の構造計算は、東京の増田建築構造事務所のチーフを務め、最近独立された山田憲明氏にお願いした。図面納期との狭間で、先に実施設計を書いて、その後、計算で事後チェックをしながら纏めてもらったが、書いた実施の構造図とほとんど変わることなく計算上も納まった。

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                   <同 大階段>
この11日に地鎮祭が執り行われ、これより地下に取り掛かる。
年内に建て方が出来るかと、目下、材料集めに奔走中だ。これまで木材を入れてくれた大きな材木商が閉鎖になったりと、この世界の厳しい現状を再確認させられたが、ほぼ図面通りの材種、材寸、梁の曲がりなどが入手できそうで胸をなで下ろしている。
大階段周りの小屋組は些か複雑で、材料と相談せねばならない箇所も出てくるが、そのほか大工泣かせの仕事も多い。施工図は高山建設の手練れ、小河さんが控えているのでまずは安心である。
来夏ご遷宮前の竣工を目指し、現場も気を吐いている。
また工事の進捗にあわせ、詳しく紹介したい。
  (前田)