日が照ると蒸し暑さを感じるようになって参りました。
皆さまいかがお過ごしでしょうか。
さてこのたび、第30回三重県建築賞に、おかげ横丁西玄関棟が入選しました。
17日が表彰式ですが、築1年の節目に朗報です。
<西側よりの外観>
外観からは察しられないかも知れませんが、この建物の主たる用途は倉庫で、道路に面した小幅分を店にしています。店は「浪曲茶屋」と名付けられ、茶屋として訪れる人を迎えています。
完成時に、小欄で紹介した建物です。
矩折れに接する道路に面して店を設け、その裏、敷地の大部分を倉庫や配送機能が占めています。
また計画中に景観条例が施行され、地域の景観に寄与するとともに、高さが10mまでと制定されました。機能を求められる建築としては厳しい条件ですが、地域としては必要なものでしょう。
そこで、用途を満足させるために骨組みを鉄骨造としながらも、大空間を確保しつつ、地域の景観に配慮して纏めました。
ここは、内宮にほど近い国道沿いの立地で、おはらい町とは距離的に幾らも離れていないのですが、周辺に伊勢らしい佇まいは見あたりません。国道の拡幅時に原因があったのかも知れません。
そこで、景観で地域を主導しようと、用途にかかわらず果敢に挑戦してみました。
伊勢の伝統的な妻入りの外観、刻み囲いはもとより、各所さまざまに格子を散りばめることで、大きくなる建物の外観にリズムを与え、表情を和らげる工夫をしています。
<南側外観>
また地域の建築にするため、実は店の部分は木造で作っています。
鉄骨に張りぼてでは、とても地域の建築にはならないと、無理を承知で混構造を採用しました。木造と鉄骨造の混合ですね。
案の定、申請にはとてつもなく時間が掛かり、検査機関には泣かされました。
それでも結果として、求められる機能と地域に相応しい建築のあり方が融合でき、ひとつの解が示せたかと、自負しています。
地域の建築に貢献する。
簡単なようで難しい課題ですが、用途いかんに関わらず、地域を見据えた建築の作り方もあるのかと、今回の計画に取り組んで、強く思いました。
こうした取り組みを評価戴き、私たちも嬉しく思っています。
さらに地域の建築に貢献できるよう、今後の励みにして参ります。
(かりの)
建築主 有限会社 伊勢福
設計監理 前田 伸治
暮らし十職 一級建築士事務所
施 工 日本土建株式会社 担当 中瀬忠典