川沿いの家 2.

車窓から見る山並みが、水泡のようにぼこぼこ盛り上がって見える。
濃い緑にかぶさるように新緑が覆い、隆起した木々の陰影が山の存在を際立たせている。博多ではすでに色が落ち着きだしたが、関ヶ原あたりはまだ色薄く、新緑も次第に北上していくのがわかる。
博多からの帰途、車中これを書いているが、然るべく連休も仕事三昧である。

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              <構造体が見える2階リビング>
新春に触れた川沿いの家も、着々と工事が進んでいる。
地震の影響はなかったが、監理に赴く手段が高速バスしかないため、東北行はかなり身体に堪える。現在建て方を終え屋根を葺き、外周のサッシを付けだしたが、資材確保を並行しながらのため、工期延長もやむを得まい。
南東に道路がつく角地で、南は道路を挟んで大きな川に面している。遠景に山並みも望める自然豊かな立地で、ひと目見たときからこの眺望を得ようと、2階にリビングをと決めていた。どのような景色が見られるか、手探りで設計を進めたこともあって、早く確かめたいと思っていた。
前面に道路を挟むため、川からの距離と2階の床高に慎重になったが、まずは思い通りに取れた。ソファーに座して川面を見せたいと企図したように、流れの細波も望め安堵している。
写真では安全ネットではっきり見えないが、大きく取った開口に景色が引き寄せられるように映っていた。

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               <リビングから川方向を見る>
設計時の制約もあって単純な総2階にしたが、シンプルな外観を、いかに特徴もって美しくまとめるかも課題だった。
そのため、屋根を切妻に軒先を大きく出し、構造体の均整に意を払った。
軒先を6尺と大きく出すため出桁を通し、小屋梁を延ばしこれを支えている。
仕上げはこれからだが、室内からは軒裏が伺え、景色が軒先に従って水平に切り取られる格好となる。
完成時には改めて紹介しよう。
連休最後から八戸に向かい、施主を交えて仕上材の選定にあたる。
前日には東京府中の材料検査もあって、こちらも楽しみなところだ。
これより帰りしだい盛岡の住宅の実施設計を書くため、車中怠けず考えようかと、のらくら建築常住に過ごしている。
  (前田)

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                 <小屋梁が延びた軒先>