第5回伊勢景観デザイン賞

このたび被災されました方々に、改めてお見舞い申し上げます。
日々増え続ける悲しみを前に、建築に携わり、人の命と直接関わる仕事をしている重責を、改めて肝に銘じています。
先日、被災地復興のため、現地の建物の補修に奔走している加藤棟梁からお電話をいただきました。私の父ほどのお歳ですが、精力的に尽力され、その言葉から窺う過酷さに、掛ける言葉も見つかりませんでした。
棟梁いわく、現場の建物から日々色々と教えてもらっていると。
伝統の建築工法の素晴らしさ、それゆえの危うさ、そして現行法規の脆さも・・・・
「私はやりますよ。 これらをまとめて、本来の日本建築を取り戻します」
復興の先を見据え、建築を愛おしむ、宮大工棟梁としての誇りと、力強い言葉に励まされました。
さて、そのような時ですが、前回に引き続きこのたび、第5回伊勢景観デザイン賞を受賞させていただきました。
前回から5年を経て第5回目となるこの賞は、伊勢の景観に相応しい建築を、市民から募って選ぶという地域の目線を重視した賞です。市民からの推薦作品80点の中から、選考委員会の審査を経て入賞が決まりました。

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                  <五十鈴茶屋外観>
受賞作は、小欄でご承知の五十鈴茶屋です。
この辺りは、五十鈴川の川幅もふくよかに、対岸には雄大な山並みが連なり、河畔では川曳きの神宮行事が行われる、伊勢の雄大さを実感できる場所です。また市営駐車場に隣接し、今では多くの人が訪れる、おはらい町の玄関口ともいえる立地になりました。
延べ450坪の木造建築で、これまで数々賞もいただきました。
2階からは、五十鈴川とその向こうに連なる山並みが一望できます。
また、五十鈴川への繋がりを大切にと橋が架けられ、堤防から川へと降りることもでき、川伝いに内宮までも歩くことができます。周辺は桜に囲まれ、これからの季節は、みごとに桜の中に浮いたような建築になります。

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                    <川側外観>
この建築には、多くの地元の職人さんの技が息づいています。 地元の職人の力なくしては、出来なかった建築でもあります。
私ども伊勢出身でないにもかかわらず、この地でご縁をいただいて仕事をさせて頂き、また市民の方の目を通してこのような賞をいただけることに、今までにも増して嬉しく思っております。
これからも皆さまに喜ばれ、地域発展に少しでも貢献できるよう、地域に密接した建築を心がけ、なお一層、真摯にこの仕事に従事していきたいと思っています。
今後とも、ご鞭撻のほどをお願い申し上げます。
  (かりの)