盛岡K邸竣工ー完

リビングに接して、キッチンとダイニングが繋がる。
大きな吹抜と一転し、高さを抑えた天井が、そのまま外へと視線を誘う。
存分に外と交わりたい、そう思って窓を配した。
林の緑が溢れんばかりに窓から飛び込んでくる。

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           <キッチンからダイニング~借景の緑を望む>
一室で繋がりながらも、用途が異なる空間は分けたい。
以前にも書いたし、そのようにも作ってきたが、今回もそれを踏襲した。抑えた天井は空間の質を変え、平面を幾らか突出させることで、囲われ感を加えた。
ダイニングは食卓に沿って窓高を定め、障害なく窓外の景色を繋ぐ。
距離にすれば大したこともないが、ここに座ってみる景色はリビングとは明らかに異なる。この加減がミソで、空間を変える力は視点の取り方にも内包されていると思う。
そのわずかな角度や高さが景色を捉えるときには重要で、これぞと思うアングルはそう多くはない。写真を撮る目で見たら分かるだろう。
室内から景色を切り取るのも同じことで、机上の設計時に、その窓からの景色を思い描けないと、出来てから嘆いても後の祭りである。
周辺環境はどうか、建物との関係は、家具はどこにおくのか、座る視線の高さなど、ある程度計算できないと設計にはならない。もちろんそれだけが全てではないが、大切な土地の美点を見失ったり、価値を損なうことがあってはなるまい。

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                    <子供室>
リビングに接して土間席が繋がり、キッチン正面の2階が子供室になる。
キッチンに立ちながらも、子供がうかがえるプランをと奥さまが望まれた。
子供室は大部屋で、将来分けることも考慮に入れている。屋根裏を利用したロフトも思うより広く取れ、すでに子供たちの格好の遊び場になっていることだろう。
5人の子たちが机を並べるのが、2階の廊下である。
成長に合わせ、ここが彼ら彼女らの思索の場となる。背向かいにはご主人の書斎が繋がり、家族のスタディーコーナーとなった。5mほどの長机を造り付け、階段を挟んでリビングに面している。
窓外の緑が一望で、家のなかどこにいても目に飛び込んでくる。

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                 <スタディーコーナー>
建物で塞がれたことで、崖地も隠れ、意識も薄められたようだ。
引渡し前には内覧会も催され、求めに応じて少し話す機会を得た。
端的にいえば、どのような土地にも利点と欠点があって、利点をより活かすことで、その土地にしかできない建築を生むことができるのだと。
周辺の住人もあまねく訪れたが、一見して感嘆し、納得していた。

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                 <玄関へのアプローチ>
設計監理   前田 伸治
         暮らし十職 一級建築士事務所
施 工     株式会社  大山建工
造 園     福清緑化  加藤孝志
  (前田)