さる10月31日、かねて紹介したフォーラムに招かれた。
地元産出の木材を使った家づくりをテーマに企画したもので、青森県の主催によった。国土の7割の森林資源を持つ我が国でありながら、国産材の使用はたったの2割という。
木材産地の大きな不安を感じた。
青森県も県域に7割の森林を有し、杉、ヒバ、赤松、欅、落葉松(からまつ)、ブナ、栗などを産出する。その豊富な樹種は他県に勝るものであり、県産材だけで充分に木を楽しめる家が建つ。
しかし国産材利用の落ち込みは激しく、青森県といえども例外ではない。
川上と川下が一体となって、積極的な県産材の活用を訴えるは急務なことと、林業家から工務店までを含めた活動が今回のフォーラムに繋がった。
<会場風景>
県の林業振興課、工藤真治氏が第一部の講演を、第二部を私が務めた。
工藤氏は具体的な数値を示しながら、県産材の材種や数量、強度や耐久性などを事細かに説明され、これまでの先入観による曖昧な理解を正す内容だった。
ホワイトウッドなど外材の耐朽性の脆弱さや、思うより強い杉の性質などを、改めて勉強させられた。
「設計者があまりに木を知らない」
ハッとする苦言も挟み、木の正しい理解が、木を生かした建築を生むと訴えた。
私の話はとにかくとしても、200名余りの聴講者が最後まで熱心に耳を傾けた。
<講演する私>
会後の懇親会には、林業家、製材所、木材屋、工務店と、建築に至るまでに関わる人たちが一同に集い、県の関係者、大学教授らも加わって、熱い議論が方々で交わされた。
及ばずながら私も仲間に加わり、木材を巡る現状に暫し身をおいた。
産地が主体となって木材を数値化することで使用促進に貢献できないか、行政のバックアップによる県産材活用の訴求や、木の魅力を建築に活かす方途の模索、早急な木造設計者の育成など、話題は多岐に及んだ。
ある木材関係者は、製材所の目利きが早晩絶えると警告を発していた。
コンピューターによる製材は木を”もの”としか認識しないため、何でも一律に挽いてしまう。結果、多くの尊い木を殺してしまっているのだと。目利きの手に掛かると、木の癖や性質を瞬時に見極めて加減するため、一見暴れ木に見えるものからも見違えるほどの綺麗な木材を取るという。貴重な資源を活かすには、長年培った人間の洞察力や勘が今こそ必要なんだと激しく迫っていた。
またある林業家は、人手を省いてきたこれまでの代償は想像以上に大きいと、胸詰まる嘆きに危機感を覚えた。
木材を巡る現状は、多少なりともかじっているつもりだったが、川上から川下まで、いわゆる森を見つめる林業家から町中で実際手を掛ける大工までと、連携した実務者同士の話には説得力がある。
日頃木を扱う仕事に携わりながらも、顧みて考えるところが大きい。
「木は私らより長生きしてるんだよ」
耳する言葉にも木を愛する心が溢れ、暖かな想いと現状の厳しさが交錯していた。
(前田)