森別邸竣工ー1.

石巻の森別邸が竣工した。
当初の茶室の移築に始まること3年あまり、漸く先日完成をみた。
大きな敷地だが、密度を持って日本の空間に仕立てれたかと、まずは胸をなで下ろしている。竣工にあたっては宮城テレビも取材に訪れ華を添えていた。
ここに改めて紹介したい。

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                    <表門周り>
この別邸の正面口となる表門である。
銅板で葺く寄棟の屋根をのせ、正面の袖と左手側を塀で囲う。
門前には、四間四方の空間を取ることで導入への格式を整え、囲った駒寄せが、さらに空間を際だたせた。
地には大きな延石を、モンドリアンよろしく意匠的に敷き並べている。
この石は稲井(いない)石と呼ばれ、森先生自らの調達による。地元石巻地域産出の石で、黒味がかったしっとりした石肌が魅力である。大きなものは7mを超えており、どう使ったらいいのか随分悩んだ。
敷地こそ大きいが、人の感覚を超えた取り合わせは空間を小さくしかねず、またこの大石の希少価値を、価値たらしめる使い方も問われるだろう。
思索を重ねたが、この地をキャンバスに見立てて使うことにした。
用と美を兼ね備え、堂々とした佇まいを目指した。
敷地南西にかけては、自然石を積んで塀代わりとしている。
一段で積むと高さに圧迫されるため、植裁を挟んで二段に分けた。鳥海石と呼ぶ荒々しい肌合いの石だが、使い方次第ではこのような柔らかな表情になる。
この石積みも庭師、加藤さんの仕事である。

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                     <表 門>
表門の門柱は杉磨丸太、まぐさには面皮丸太を、垂木は杉小丸太を用いた。
自然の丸太そのままに組み上げている。
構造としては、2本の門柱と六角になぐった栗の控柱、4本で支える単純なものだが、屋根を受ける出桁が四方に周り、そこに隅木が掛かり垂木が取り付く。
厳しい納めだけに、仕事に逃げが許されない。
屋根勾配には仄かな起りをつけ、一層の穏やかさを求めた。
袖塀は栗のなぐりを詰打ちとし、格調を整えながら外界の空間を断ち切る。
隠れているが、門扉には杉中杢の鏡板戸を立てた。加藤棟梁の眼力で、山形と秋田県境に自生する樹齢300年の金山杉から木取られたもので、おとなしい杢目の板が入った。

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                   <門内の白州>
門内には、左手から門に被さるように松が植えられ、それを潜ると門外と同じ広さの四間四方の空間に迎えられる。伊勢砂利を一面に敷いたシンプルな空間に、踏みしめる足音が響く。
正面は生垣高くに空間を閉じ、石垣沿いに抜ける右手に主苑路が繋がる。
緩やかに弧を描いて登る苑路に、右手から伸びた紅葉が上空を覆う。
紅葉の脚元には苔をあしらい、玉もののサツキをアクセントに添えた。
新緑に覆われているが、葉が落ちると苑路正面には大きな樫が現れて、アイストップとなる。
庭といえども抑制された構成は、次なる展開を期待させるに違いない。
 (つづく)

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                    <主苑路を見る>
  (前田)