老舗 浜千代館

二見(ふたみ)にある「浜千代館」の改修に携わった。
現当主で4代目を数える老舗旅館で、二見浦の海を眺める景勝の地に建つ。
昨年の正月明けに電話をいただいたのが縁で、改修計画を依頼された。

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先代が作られた建物が、海に面して東西の長きに連なり、東側の突端には先々代が吉野の山から伐りだして建てた木造建築も残る。
屋根に上る鬼瓦や戸袋の意匠、手摺などには緻密な細工が伺え、当時の工人らの腕の確かさを思わせる。もしかすると、上方あたりから造作大工を連れてきたのかも知れない。桐板に二見の景色を写した木造旅館だった頃の欄間も各所に飾られ、老舗の風格漂う室礼が施されていた。
古きものの中にあって、それを大切に受け継ぐ姿が、伺った浜千代館の初印象であった。
家内は名古屋近郊の出身とあって、修学旅行は伊勢から二見だったという。
二見で泊まって翌朝、女夫岩を見て神宮をお参りし、というのがコースのようだ。
今も修学旅行はもちろんのこと、近年インターネットで検索して尋ねる個人旅行客が増えているという。旅行会社が世話する団体旅行から脱却した証だろう。
そういった新しい時代に向け、浜千代館をどう創っていくべきか、依頼の根底に聞く浜千代さんの声を受け止め、改修計画を練った。これからの旅館が目指す姿や方向性、20、30年先の像を手探りで結ぶように、互いに交わした話から組み立てたものである。

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まず取っ掛かりとして、エントランス、ロビー周りと、客室の一部を障った。
リニューアル浜千代館を、多くの来館客に直に感じてもらいたいと願ってのことである。
4月16日に竣工式を経て、早速4月末には女将さんのジャズライブも開かれた。
新生浜千代館の新たな門出である。
内部の紹介は次回に譲る。
  (前田)