腰掛けを出て、少し右に迂回するように中門へと向かう。
手前に霰こぼしの延段を打ち、ここでは枝折戸が中門の役を担う。
右に迂回したのは、茶室の妻に掛かる扁額を望むためで、そこからゆっくりと回り込むように、茶室へと向かう。
露地の道行きが描けたところで、蹲踞に取り掛かる。
露地の中、最も重要な所作が行われるところである。
地盤の関係で、腰掛から茶室に向かい徐々に下がることもあって、降り蹲踞(おりつくばい)とした。ゆっくり左に回り込む、描く輪の中に蹲踞が位置する。
降り蹲踞とは、露地から下って使うように据えられた蹲踞のことで、その形式は古いとされる。降りるといっても、2、3石程度だが、それでも降りることで周りを囲まれた印象が強くなる。依然露地として広すぎる空間だということも、この形式を選んだ理由でもある。
手水鉢は移築された茶室に添ったもので、灯籠も同様である。
どちらも古品で欠けもあるが、歴史を尊重した。
蹲踞を組むに、まず前石を据え中央に手水鉢、左右に手燭石、湯桶石を整え、手前に海を大きく取る。背景を拵えるため奥に景石を設え、灯籠を鉢灯りに添える。
露地から降りて前石に蹲い、柄杓を持って口手を清め、きびすを返し再び茶室へ向かうという、一連の動作がこの何石かの間で行われることから、石選びはもとより、各石相互の高さと間合い、周囲との馴染みなどに考えを巡らせ、慎重に組み合わせる。
幾度も同じ動作を繰り返し調整を重ねるが、それでも時改めて見るとまた悪所が見え、忸怩たる中やむなく手直しをする。まこと石組みは難しい。
迎付けの直前、亭主は客のため、自ら露地に降りて手水鉢に水を張る。
客は亭主の運んだ水で心身を清めることを初の所作とし、茶室へと向かう。
まさに、水を通して主客の心が触れ合う場所がこの蹲踞であり、茶の湯根幹の所作が伺える。露地における最も重要な、といった所以である。
周囲は茶の湯の雰囲気に馴染むよう、柔らかい植裁をあしらった。
また完成の折りに、改めて紹介しよう。
(前田)