左座邸四畳半ー2.

左座邸の続きを。
2方を道路に面した良好な立地である。
ただ市街地のやむを得なさか、東側道路の向かい、南側隣地にも同じく5階建てのマンションが建つ。しかし隣接する西側一帯には住宅地が拡がり、それぞれ区画の大きい瀟洒な家が建ち並んでいる。
店に近いのが大きな利点で、子供もあれば、この出会いは運命かも知れない。
どうだろうか、彼から電話があった。
建築条件上、メーカーで建てざるを得ないが、自分らの住まいとして誇れるようなものを作りたい。早速、どれほどの規模が建てられるか、メーカーにプランを依頼したという。
自分ら家族の住まいに、2台の駐車スペース、それに加えて茶室があればと。
「出てきたプランを見て欲しい」、一週間後に再び電話があった。
見るからに大雑把なプランだが、ひと目見て、2,3の問題点を話すうち、
「ちょっと待って、少し考えてみるわ」、つい口を滑らせた。
再度電話で要望を聞きながら、敷地に落とし込んだのがコートハウスだった。
「これはいいですね~。思ったとおりです」
すぐ福岡に来て欲しいとの話をうけ、来福の晩に彼から設計を依頼された。

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           (当初の1階ラフプラン、中庭と茶室が見える)
主立った住まい部分を2階に集約させ、周囲の喧噪から独立させながら、陽の取り込みを計った。マンションに囲まれた東、南東部分は期待できないため、南西から西にかけての陽射しは大いに取り込みたい。
プライバシー上、平面掲載は憚るが、2階には南に向けた20畳大のリビング、矩折れにはダイニング、キッチンが続き、テラスを介して、南側に寝室を配る。
全ての部屋が中庭を介し、家族同士の居場所が伝わる暖かな家を願った。

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             (2階リビングからダイニング~中庭へ)
また、プランを練る中ではメーカーの認定基準を巡り、担当者と相当やり合った。
左座さんも京都で鍛えた強者である、決して一筋縄では引かない。
硬軟強弱を取り混ぜた応対で対峙し、ギリギリの葛藤の末、このプランができた。
メーカーは自社独自の建築認定を受けているため、些細な変更程度は可能だが、このような白紙の上からプランを作ることには向いていない。担当者が意地悪なわけではないのだが、どうしても認定部分が仇となり、思ったようなプランにならない。こんな客は初めてだと、顔に書いてあった。
言い争いは枚挙に遑ないが、最後は互いに力尽くした納得の形になった。
やれば出来るのかと、改めて思う。
竣工には、メーカーの担当者全員と営業所の人も駆け付け、全員で健闘を称え合ったそうだ。

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                (計画段階の外観)
店から来る通りの角を曲がると、この外観が飛び込んでくる。
階段のガラス面が、夜は行灯のように、家族を温かく迎えてくれることだろう。
角に植えた樹は、家族の成長とともにこの家を大きく包み、街中にあって家族の絆を現すものになって欲しいと、期待を込めた。
茶室の話をしようと思って書き出したが、思わず寄り道をした。
次回、改めて詳細を述べる。
  (前田)