石巻、森別邸の続きから。
まず、全体計画の練り直しに取り掛かった。
池と茶室の位置、それに加え、作りかけられた広間棟の配置を考慮しながら計画を立て直す。白紙に計画するより、よほど困難を伴う。現在の状況と余条件を吟味しつつ、纏めねばならない。
ひと目見て、広間は計画し直さねばと踏んだ。状況は決して好ましくない。
慎重に提案を重ねながら、施主の意向を計る。
これならばと案を固めたのは、伺って2ヶ月も過ぎた頃だった。
広間を庭に開放し、庭は場所ごとに役割を与えつつ、互いの関係性を構築する。
関係の連鎖が全体に響くような、そんな濃密な繋がりで全体を纏めたい。
(前面道路より表門を望む)
当初からの茶室や池を取り込み、地泉回遊式の庭として全体を構成する。
ゆっくりと歩を進めながら、池を中心とした景色も次第に代わってゆく。開いたり閉じたり、空間に強弱をつけながら、池畔から茶室を取り巻く茶庭へと繋がっていく。
茶庭に至って空間は一転して緻密になり、苑路も次第に延段から飛石へと、小さな歩幅となる。先ほどの池畔の景色とはまるで異なる佇まいが拡がり、庭園全体に奥行きを生む。
途中、広間棟の玄関を望むが、展開する景色を訪ねながら全体を一巡できる。
そんな庭を思い描いた。
実際、池周囲には余白が残されていたので、実現は可能なようだが、茶室周りの庭を回遊苑路として如何に取り込むかに腐心した。
茶室は”茶の湯”をすることで、初めて茶室になる。
しかし茶の湯は茶室だけではなく、そこにいたる露地や寄付など、一連の茶事の流れに添った空間が整えられねばならない。茶室だけで、茶は成立しない。
茶事の機能を完備しながら、広間との関係を構築し、さらに回遊庭園としての性格を完結させねばならない。現在移築された茶室がある以上、新たに設けられる広間のあり方が、この庭に反映される必要があるのだ。
しかし、当初拝見したプランでは、とても茶事など行える内容ではなかった。
改めて全権を委任され、プランの再考と、庭園との取付きを探っていった。
(全体配置計画図)
広間は思い切って現状を改変し、茶事を根底においた茶室との連携を構築するとともに、門塀など施設全体として規模に相応しいあり方を模索した。
茶事などには、建物近くに入口をと、数寄屋門を開け、この別業への主たるアプローチには、戌亥の方角に表門を開ける。また池に面して四阿を設け、苑路を巡る休息と、池畔各所からの添景に一役買わせようと思う。
各所にいたっては、改めて説明したい。
工事の進行と作庭状況を併せて、詳細は後日に譲る。
(前田)