左座邸四畳半

昨年、S邸茶の湯サロンで紹介した左座さんが、続いて自宅を新築された。
土地取得の関係で、さる住宅メーカーが請け負ったが、設計は私が承った。
さすがにお茶に関わる方だけあって、自宅にも茶室が欲しいという。
少し、その過程もお話ししようと思う。
福岡、西新商店街の裏、閑静な一等地にその場所はある。
北と東に道路が取付く角地で、周りを住宅地に囲まれている。そのただ中に、ちょうど南西の方角に向け、この家のためにと思うような大きな抜けができていて、隣家の緑が折り重なるように迫ってくる。きっと風もここを選んで吹き抜けていくのだろう。
あたり一帯は、今後も高い建物も建つことがない環境で、一瞥するところ都市住居として格好の立地である。
この敷地を見、要望を聞いた途端に浮かんだのが、コートハウスだった。
敷地の真ん中に大きく中庭の空間を取って、都市の喧噪から逃れた環境を作ることで、家族のための空間が生まれはしないか。
早速思いついたプランを書いて渡したが、彼も中庭を大いに気に入ってくれた。
その後、要望を纏める中で、何遍かプランを書き直したが、最後までこの中庭のあり方は変わることがなかった。

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周辺は、通過する車の交通量がかなり多く、病院が近いせいか煩雑に人が行き来する。
また彼ら夫婦も、お店を営んでいるため、休む間もない生活を強いられる。
それらの生活環境からも、何とか住まいは静寂を確保したい、より充実したプライベートの空間を作りたい、との思いから、生活の中心を2階に移すことで、外界と遮断した空間を作りたいと考えた。
外の環境とは全く違う、自分たち独自の空間となるなるものをである。
周辺と関わらない空間が、ここでは必須と判断した。
2階は地面こそないが、各部屋は中庭に面していて、それぞれが中庭越しに繋がるという、内外一体の空間が生まれる。都市の中では、この空間が唯一の自然でもある。
道路側を建物で囲うことで、騒音や視線を遮り、一転して中庭は開け放たれた開放的な空間が拡がる。家のどこにいても、中庭を介してその存在が伝わってくる。
中庭には大きな木を植えて、緑眺めながらの一日が始まる。
鳥も訪れる場所が家にあるなんて、都会では贅沢な場所だろう。
その中庭に面して、茶室を設けた。
玄関脇の四畳半と、庭に面した3畳台目からなる本格的な茶室である。
詳しくは次回に譲るが、敷地の大きさからいって、これだけのものが入ると、当初思わなかった。諦めず取り組んだ成果といっていいだろう。
プランは、練る中で厳しさが増し、次第に空間が整えられる。
小さいかも知れないが、豊かな数寄屋の取り組みになることを願っている。
  (前田)