言い訳と、「四季の暮らしと室礼」 その1

雨模様が続き、久しぶりに今年は梅雨らしい気候となった。
ブログがすっかりご無沙汰になってしまい、失礼お許し願いたい。
気にはなるものの、どうしても手が動かない。
現在の仕事を吐露して、言い訳をさせて頂くと、
  伊勢・・・・・地下道美術館計画(設計完了)
         店舗の改装3件(設計完了~見積もり)
  二見・・・・・旅館の改修(実施設計段階)
  福岡・・・・・茶室(近々現場入)
  石巻・・・・・茶室・庭園・附属屋一式(現場、外構見積もり)
  東京・・・・・住宅(基本設計中)
  八戸・・・・・住宅(基本設計中)
  京都・・・・・町屋改修(基本設計完了)
となっていて、所員3人で気を吐いている。

画像

                   (石巻 森別邸)
今は着実に仕事を進めることで精一杯で、正直余裕がない。
もう少し全体に進行した段階で、改めてそれぞれの仕事を紹介したい。
何卒暫しご猶予賜りたいと、お願い申し上げる次第である。
先月五十鈴塾にて「四季の暮らしと室礼」という題で、講演を行った。
その内容を紹介し、取り敢えずの責めを塞ごうと思う。
  (前田)
ご無沙汰しております。かりのです。
今年はよく雨が降ります。
夏の暑さに見たくもない太陽も、梅雨の晴れ間には何とも有り難く感じられます。
日々のお天道様に対して、こんな両端な感情を持ち合わせるのも四季があるからでしょうか。
先月、5月11日に五十鈴塾で行われた前田さんの講演は、日本の四季が作り出した暮らしの環境についてです。
「四季の暮らしと室礼」
聞き書きですが、何回かに分けて紹介させていただきます。
質問や感想など、どしどしお寄せ下さい。
今回は分かりやすい内容です。聴講された方にも好評でした。
どうぞお付き合いください。
 ~ 「四季の暮らしと室礼」ーその1 ~
私たちの住む日本は、四季に恵まれたとてもいい環境にあります。
地球的に見ても、四季があるというのはある意味特異な場所なんですね。中緯度といって、地球の四分の一あたりにしか実はこの四季はありません。放送関係の友人がいってましたが、シベリアの人から見ると私たち日本人は「毎日太陽が出たり入ったりする国の人々」と思われているんだよ、と聞いてびっくりしました。
まさに太陽が出たり入ったりするから、季節がはっきりするんでしょうけど、この四季に恵まれた私たちも、四季が当たり前になりすぎて、どうも忘れてしまっているようにも感じます。
この十数年の間、それは顕著になったようで、生活環境の都市化や住まいの変化などに代表されるように、私たちが生んだ人工環境によって、身近な自然を遠ざけてきたのが原因のように思います。特に冷暖房の普及は、私たちから自然の空気に接する機会を奪いました。ともすれば、一日中外気に触れることなく過ごしてしまう環境は、とても自然とは思えません。また昨今話題の冷凍食品やバイオテクノロジーの効率化は、私たちから食材の旬を奪ったといってもいいでしょう。
それは、あまりに快適さを追及しすぎた、生活のゆとりのなさに起因しているのかも知れません。
これは、とある勤勉な蜂蜜業者の話です。
毎年花を追って日本中を移動し、アカシアの花の蜜、トチの花の蜜と、季節ごとに混じりけのない純粋な蜂蜜ばかりを作って提供していた人がいました。
そんな彼が年を取ったある日、そろそろ移動が困難になったこともあり、一計を案じました。移動しなくても一年中花のある場所に行って巣箱を広げていれば、自分は楽をすることができるんじゃないか、そう思いついたんですね。
彼はこの着想を、すぐ実行に移しました。全ての巣箱を持ってインドネシアに行ったそうです。
予想通り、その地は百花繚乱と花が咲き乱れていました。彼はすぐさま巣箱を広げて蜂を放ちましたが、蜂は巣箱に帰っても蜜をはかなくなったそうです。蜂でもそういう感覚が分かるんですね。ここにいれば一年中花があると。
「花のなくなる季節が来る」、と思うからこそ、蜂は蜜を溜めるんだそうです。
もうひとつ、茶色の弁当の話。
ある幼稚園を経営されている方の話ですが、近頃の幼稚園児が持ってくるお弁当を見ていると、みんな茶色一色に見えるといいます。どの子の弁当もハンバーグ、ソーセージ、肉団子。母親の社会進出の影響らしいですが、子供の弁当を作る時間を短縮したいから、つい子供の好きなおかずばかり並べてしまう。
母親の社会進出で図らずも子供に与えられた「人工環境」が、茶色の弁当を生んでしまうんです。
私たちの食事は、五色を揃えることによって、健康な食べものの取り合わせとして、日本人のノウハウを語り伝えてきました。それは冷凍食品のない時代、季節を丸ごと放り込まねば到底成り立たない献立だったでしょう。
蜂の話もそうですが、季節があることで私たちは享受できる素晴らしさがたくさんあって、それが無言のうちに私たちに季節感を知らしめ、自然の移ろいを教えてくれていたんだろうと思うのです。
次回は、ー日本の四季と行事ーについてです。
ご覧下さいませ。
  (かりの)