道具への愛着

先日、Wさんという方から1件のお電話をいただきました。
「衣桁(えこう)の金具が壊れて折れてしまったのでその金具を捜して欲しい」
HPをご覧頂いたようで、家具についての認識もあろうとご相談下さったことです。
早速電話で詳しいことをお聞きし、壊れた現物を送っていただきました。

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どうやら折れた先端部分は紛失されたようで、随分とご自身で捜された様子。
同じ様な形状のものがあれば嬉しいのですが・・・・・・、といった内容でした。
かつての金具も留めてあった部分が細く、木部自体がもろくなっているので、金具の大きさがなるべく同じサイズのものがいいというご依頼でした。
早速方々に、訪ねるメールを流しました。
私どもでも存じ寄りの金物屋に直接訊ねてみましたが、「既にそのような金具はない」、とのこと。
メールで流した業者さんからも、「こういう形のものはもう見あたらない」と。
また形状が分かっても、古い形なので依頼の個数分(5個)あるかどうか。
「最悪な場合は作ることになりますが、相当高価になると思うし時間も掛かる」
とも、言われていました。
依頼主のWさんも、とても大切にされている衣桁のようです。
何としても元の衣桁の金具に近いものをと思っておりましたところ、幸運にも
「同サイズのものが見つかりました!」
と一報が入ってきました。
やはり型版も、既に廃版とのこと。
最後の5個が辛うじて、岐阜の金物問屋の片隅に眠っていました。
「これで最後なので、もうこの後はありませんよ」
と言われましたが、ホッと胸をなで下ろした次第です(笑)
早速こちらに送って貰い、依頼主のWさんに郵送させていただきました。
「もしよろしければ、金具を取り付けたお写真を送ってください」
という添え書きも、ちゃっかりつけさせていただきました。
新しい金具を気に入っていただけたかドキドキの毎日でしたが、
先日Wさんから、取り付けた写真が感謝の言葉とともに送られてきました。

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どうやら、お義母様が長年ご愛用の衣桁だったようです。
金具を取り付けたことで、「古い衣桁がまた使えるようになった」
と喜びの言葉を頂きました。
今は壊れたら捨てて、新しい物を手に入れる時代です。
その中にあって愛着ある道具を手入れし、いつまでも大事に使い続けるお心に、改めて清々しさを感じた出来事でした。
きっとこの衣桁は、この後もずっと大事に使われていくことでしょう。
またその気持ちが、周囲の方に受け継がれていくことを切に願います。
改めて、ご依頼いただいたWさんにこの場を借りしまして感謝申します。
ありがとうございました。
暮らし十職では、このような日常の生活にまつわるご依頼もお待ちしています。
どうぞご遠慮なく、まずはお気楽にご相談ください。
 (かりの)