10月に完成内覧会を開いて2ヶ月あまり。
ホームページ上で既に写真をご覧頂いたかも知れないが、改めて紹介しよう。
山口邸、木の家の誕生である。
当初から公開する約束のコストだが、最終、66万/坪で納まった。
外構、植裁一式、設計料を入れても、74万/坪、実物をご覧頂いた方には、恐らく想像以下の価格かと思う。これも、扇光 中西専務のおかげと、山口さんが私どもを信頼していただいたからできたコストパフォーマンスだと思う。
昨今の住宅メーカーでも、70万/坪など、どこでも平気で提示する価格である。
やりようによって、自分好みの”ほんものの木の家”が手に入る。
そんな木の家を、多くの人に住んでもらいたい。
その願いで設計をしている。
通常、あまりおおびらにできないのが、この価格である。
注文住宅は、その家の間取りも、かかった工事費も、施主との関係で作り上げたものだから、そう簡単に喋るわけにはいかない。それが互いの信頼である。
昔からの工務店や大工などが、住宅メーカーから取り残されるのは、そういった事情もあるのかも知れない。隣の家が幾らでできたとか、あそこの家は安くできたとか、恐らく昔からやっている建築屋は絶対そのようなことを口にするまい。
自らの宣伝で、信頼に傷を付ける大きさを知っていた。
建築も暖簾で仕事をしてきたのである。
メーカーが日本の住まいを変えたという。
住宅を積み木のように、部品代と組立代に集約し、端的にコストを言った。
難しい、分かりにくいことを明瞭にしたのは結して悪いことではない。
しかし反面、作り上げるという本来の建築のあり方をゆがめた。
部品の交換で値段が変わる。複雑な形は組立代が高くなる。いつしか組み合わせを選ぶ中で、コストから住まいは作られるものと、錯覚を与えた。
住まいに標準仕様があるのがおかしいとは、思わない日本になってしまった。
建築の完成度は工事費より、むしろ込められた気持ちによるものが大きい。
施主と施工者と設計者、3者の信頼関係が築ければ、必ず工事費以上の建築ができる。
これは断言できるといっていい。
嘘だと思う人がいれば、是非訪ねてもらいたい。
自分好みの家を建てようとするならば、なおさらである。
建築は断じて商品ではない。一律などになるわけがない。
あらかじめ決められた部品の組立ではプラモデルと一緒で、建築はもっと根幹的な作る面白さがある。それこそ人の数だけ建築はあるといっていい。
全てを白紙から作り上げるのである。
だからこそ、コストも施主と一緒になって作るものなのだ。
信頼が家を作っていく。
コストも造形である。
山口さんの計らいで、当初からの過程を見ていただき、その上で理解してもらえればとコストを紹介した。こうすれば本物の”木の家”に住めると。
これも、山口さんとの信頼関係があってのことである。
肝心の建物の紹介は、次回に譲ろう。
今年も一年、ご厚誼のほどお願い申し上げます。
(前田)