いつか棟梁となる日

そろそろ大工仕事が終わろうとしている。
通常の住宅の現場では、随分と長い間、となるのだろうか。
心労を掛けた専務と、若い2人の大工を囲んで、先日の現場帰りに一席もった。
「イキがいい」、まさに2人にはその言葉がピッタリくる。
表情がとても清々しかった。

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最後に中野君は、寝室の手摺りに苦心していた。
竹で組んだ形に仕上がったが、どうもコレは専務の仕業らしい。
手摺りは竹にしたい、とはいったが、支柱は当然木のつもりをしていた。連絡がないうちに専務が「竹で」、と中野君に指示したらしい。これには苦労しただろう。
しかし山口さんは大喜び。もっともだと思う。
ウッドデッキも、寝室、リビングともに無事張り上げてくれ、今日で現場を去る。

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村林君は苦心しながらも、階段の造作を納めてくれた。
入口の関係で、宙に浮いた形の階段になった。踊場下端に片持ちの受梁を出し、それにめがけて段梁を取付かせ、突端を吊束で納める。段梁とササラ桁に段板を組込み、手摺りを立てて完了、となる。
リビングの意匠ともなる部分だけに、神経を使う仕事になった。
村林君は先日、「第21回 三重建労技能競技大会」に出場、見事優勝した。
誠に喜ばしいことである。仕事をしながら、鋭気を養ってきたのだろう。
優勝者はこの秋、全国大会への出場が決まっている。
思いっきり、自分の腕を伸ばしてもらいたい。
「鉄は熱いうちに打て」、専務の言葉だ。彼ならきっとやるだろう。
新年当初から始まった現場である。都合8ヶ月間、彼らと仕事を共にした。
黙々と自分と対話をしながら作り上げる中野君。
細かく設計意図を聞きながら、自分を確かめるように仕事に向かう村林君。
お互い、競い合う部分もきっとあるに違いない。
個性の違う2人だが、信じるところを邁進したからこそ、良い仕事に結実した。
「もう仕事で教えるところはない」、呑みながらボソッといった専務。
彼らの力量からすれば、棟梁となる日も遠くはないだろう。
「あとは人間を学べ」、彼らへの激励に力がこもっていた。

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                      (右 中野君 中央 村林君)
現場は最終段階へと差し掛かった。
最後の仕上げである。まだまだ気を抜けない。
  (前田)