古材をつかって

先々代、山口さんにとってはおじいさんが建てた以前の家、覚えてますか。
実は解体したとき、その古材を山口さんが少しとっておかれました。
戦後間もなく建てた家だそうで、山口家3代にわたっての生活が刻まれた家と聞いております。おそらく伊勢の大工さんの仕事でしょう、確かな腕を伺わせる建物でした。
周囲に親戚縁者が多い山口さんによると、
  「この家の○○の材料は○○から持ってきた」、とか
  「この柱は私が伐ったものだ」
という具合に、今まで知らない話が随分とこの機会に聞けたそうです。
昔も今も、”家を建てるということはそれだけ熱意を傾けることなんだ”
そんなことを物語っていますよね。

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「あまり良いものはありませんでした」と、山口さん。
特に取り置かれたのが、欅(けやき)を中心とする材料でした。
親類の納屋で預かってもらっているとのこと。先日山口さんに連れられて、中西専務とご一緒しました。きれいに保管された状態を見ると、山口さんの性格が偲ばれます。
早速使えるもの捜しです。
まずは縁側に張ってあった欅の板。
厚さ5分(15㎜)程のものが数枚。
短いのが難点ですが山口さんからの提案で、和室床脇の仏壇内で使うことにしました。
床脇の真中に仏壇を置き、それを挟む形でご遺影を飾ってお祀りしたい。
その棚板に使おうとのことです。むろん大賛成!
次に見たのが厚さ1.3寸(40㎜)程の欅板。
大きさ700㎜角程のものが2枚あります。
どこかに生かせないかと考え・・・・・・・・・!!!
奥さまこだわりのトイレの洗面カウンターにぴったり!
1F・2Fともにこれを使うことにしました。良いカウンターになることでしょう。
もうひとつ。
納屋の後ろに横たえて置かれた、かつての玄関式台の框。
これも5寸(150㎜)×3.5寸(105㎜)程の欅材です。
ただ式台だっただけに、周囲にさまざまな仕事がしてありホゾ穴などが・・・・。
その点若干の躊躇はありましたが、ひと目で和室の床框に使おうと思いました。
実は床框の材料に迷っていましたので・・・・。
山口さんも大いに納得のご様子です。早速中西専務に加工をお願いしました。

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古材は解体などの折り、釘などが材芯で折れたまま残っていることがあります。それをうっかり知らずに機械にかけたりしますと、アッという間に刃ものが駄目になってしまうのです。
とても慎重に見極めなくてはなりません。
どうしてもそれだけ手間が掛かってしまいますね。
帰りの車の中、
「こんなに生かせるなんて思わなかった」と、ご満悦の山口さん。
古いものを生かすことができる喜びは私たちも一緒です。
きっと、先代・先々代も喜んでいらっしゃるに違いありません。
「子供たちにもこの家の歴史を伝えるんだ」と、張り切っていました。
歴史だけは、そう簡単に手に入るものではありませんから。
 (かりの)