新五十鈴茶屋を覗こう。
実は現在、かなり仕上がってきている。
およそ95%程度の進捗で、最終の仕上工事の段階である。
ブログを始めたのがかなり仕事が進んでからだったので、全体を通した紹介が中途半端だった。肝心な建物の内容も伝えていない心苦しさもある。
完成を機に、改めて建物の全貌を紹介させていただきたいと思っている。
少し遡る。
この仕事で最後まで一番掴めなかったのが、石工だった。
切った石を合わせて建物の脚元に敷く”葛石(かずらいし)”は、いつもの高山石材 水野、長尾組が完璧な仕事をしてくれる。その点は全く心配ない。
しかし、この工事では一部に自然石の”石組み”を使った。これが最初から気掛かりだった。
私自身見たことはあっても、やったことがないからでもある。
来る人を五十鈴川に誘うため、建物の地盤髙を五十鈴川の堤防高さにまで上げていく必要があった。そのため、敷地の中を何段かに分けて段差を設けている。それらを繋ぎ段差を解消するためには、どうしても石垣が必要だった。
当初からの心配もあって、かなり早い段階から職人を捜してもらった。
石も見に行った。
これは予想に反し、案外と早く良材に巡り会った。
奈良の吉野から出る石で、黒青色系の角が立った良い石だ。
色目も申し分ない。
丸い石だと組めない。角が立っていればきっと組みやすいに違いない、そんな程度の判断だった。地元に石を積む職人もいると聞く。
取りあえずこの石と決め、吉野の職人に試し積みをしてもらう段取りを組んで貰った。
今年の初めだったと思う。
北側の目立たないところに積んでもらった。しかしどうも気に入らない。
再度石を捜し2度、3度とやり直して貰ったが、やはり駄目。もう時間がない。
根本的に彼らと考える石組みが違うことに気づいた。
今も吉野の方では石組みが多い。山間の地形だからだろう。
その中で彼らは、石を景色に見立てて組んでいく。大きな石を多く用い、少し崩しながら積んでゆく、といったらいいだろうか。書道でいえば”草体”だと思う。石と石の間を広く取り、石の凹凸を際立たせて組み上げていく。
「建物の土台となる部分だから、石組み自体に景色を作らないで欲しい」
何遍か直接申し入れたが、聞き入れてくれない。
石組みに対する固定観念があるのだろう。
そんなとき、中庭の石を敷いてくれていた職人集団が手を挙げてくれた。
以前に書いたが、この中庭一面に石を敷いている。厚さ2寸の割肌の錆び石だ。
これをランダムに張ると、何ともいえない柔らかな感じになる。
神戸の”田淵さん”率いる職人衆の仕事だ。
(高山石材 水野さん)
水野さんの采配の元、いよいよ取り掛かる。
もう試し積みをしてる時間の余裕はない。
この仕事を見届けるため、私も立ち会った。 (つづく)
(前田)