人の縁

昨年”木の家ネットワーク”の全国大会が伊勢で行われた。
私は関係者でも参加したわけでもないが、縁深いこととなった。
福岡の仕事で紹介した「建築工房 悠山想」の宮本さんは”木の家ネット”の重鎮、これに参加するため伊勢を訪れた。それまでに施主の紹介で、福岡で一度だけお会いし面識はあったが、今から思えばこの時の出会いが親しくさせて頂くきっかけであった。

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                                   (悠山想 宮本さん)
実は宮本さん、自ら設計事務所を開くことに始まり、次第に自分の建築を具現化するため大工を抱えて自身で作ろうと、建築工房を立ち上げた人だ。人としても素晴らしい建築家である。
(詳しくは、木の家ネットのHPでご覧ください)
大会終了後、新五十鈴茶屋の現場を訪ねていただいた。
夕方から大いに呑んだ。 相当呑んだ。
そこでお互い、胸襟が開けたのだろう。
明くる日からは、旧知の知り合いのようになった。それがこの仕事に繋がった。

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                                     (左官 稲葉さん)
またこの時、木の家ネットのメンバーを引き連れ、伊勢を紹介したのが私らのHPで紹介している左官の稲葉君だと、後日聞いた。いつも真剣な彼のこと、きっと気脈が通じたのであろう。その時の参加者であった淡路の左官”久住さん”の番頭さんを始め、左官数人が新五十鈴茶屋の稲葉君の仕事を見がてら、応援に来ていた。
その時に遭遇した。
かねてから稲葉君は、「自分の40歳の仕事として、この仕事を残したい」、との想いを強くもって、この仕事に臨んでくれているのを知っていた。
ちょうど2階の虫籠窓(むしこまど)を仕上げているときで、彼らが互いに左官について語り合い、仕事を通じて腕を競い合う様は、端で見ていても微笑ましく、また気が引き締まるものであった。

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新五十鈴茶屋の中庭に面する一画に、大胆な瓢柄の建具をたてることとなった。
江戸の頃、お花見などに持参したであろう”提げ重”を紹介することで、五十鈴川畔に面するこの場所から、野遊びの楽しさを発信するための試みである。その入口にたてる建具だ。
しかし作ってくれる人がいない・・・・。八方手を尽くしたが全て断られた。
絵を描いた自分の責任なのだが、福岡に行った時、宮本さんを介して打ち合わせに訪れていた建具屋さんにダメ元で話をしてみた。そうしたところ、何と引き受けてくれたのである。
形については改めて紹介するが、来週具体的な打ち合わせに赴く。
つくづく人の縁は繋がるものだと思う。
不思議に思いながらも、心から有り難いことと感謝している。
志を持って仕事に取り組むことが、何よりもこれら縁ある方々へのご恩返しだと、日々自らを励ましている。
  (前田)