三沢の数寄屋ーようやく完成ー

三沢の数寄屋がようやく完成した。随分と時間がかかったが、建築と庭とを纏めるには必要な時間だった。遠方の地であり寒冷地であることも、時間がかかった要因のひとつだが、当初描いていたことは出来たのではないかと思っている。

<見学に先立っての講演>

先日、私の講演と見学会が当地で開催された。多くの人を入れず、建築を知っている人に限定したものの、意に添わず大勢の人が来てくれた。何より、施主に喜んでいただいたことが嬉しく、肩の荷が下りた気持ちである。今回は特に、建築、庭ともに施工者に恵まれ、彼らの力がなければ到底なし得ない仕事だった。その意味でも、多くの方の協力があって完成できたことに、心から感謝している。

それに先立ち、竣工写真を撮影してもらった。写真はまだ届かないが、写真を撮りながらカメラマンにアングルを指示していると、これまで考えてきたことが次々に思い浮かび、静かな感慨を覚えた。

<北側隣家から見たところ>

網膜剥離を患って、完治後すぐに書いた実施設計がこの建物だった。既に基本設計で全体像はつかんでいたが、7か月休んだ後の作業は厳しかった。長い工事期間中のさまざまな出来事も重なり、自分を振り返る良い機会にもなった。みんなで完成を祝い、その晩一献しながら振り返る話も華を添えた。

竣工写真が届いたら、改めて小欄で紹介したい。まだ出来たこともあったのではと頭をよぎるが、今はただ静かに余韻をかみしめたい。

(前田)