茶陶の工房、茶室<竣工2>

伝統的な仕事の工房を思えば、日本的な意匠で全体を整えたい。限られた敷地を有効に使い、要望に則って内部を構成しつつ、3階建てからくる圧迫感をいかに軽減させ、敷地になじませられるかに取り組んだ。

<工房外観>

高度地区規制から10mの高さ制限があるため、各階の階高を抑え、暖勾配の切妻屋根を掛けて全体を構成した。軒を深く差し出したいと考え、2~3階の外壁ラインを道路から後退させるとともに、対して1階を道路際までせり出すことで、外観からくる視覚的な軽減を図った。

そのため、1階の外壁を高塀の意匠として、腰板を高く張ってバランスを取り、建物から切り離して見せることで全体を整えた。また不規則にならざるを得ない2階の開口部の外に、出格子を全面に配して、繊細な親子格子でリズムを付けながら3階の平格子へとつなぐ。

抑えられた軒高に対し、軒の出を4尺と深く差し出すことで、高さを感じさせないようにとねらった。見上げる軒裏は、全体を杉板張りとして木の質感をそのまま意匠に生かしている。また平面的に既存家屋と接する部分に2階への階段を設け、階段上部を下屋として家屋側の外壁ラインも後退させ、既存家屋と一定距離を保つことで全体の調和を図った。

<軒裏を望む>

高塀の腰板は、木曽の杉柾目の板を目板抑えにして張った。書いたディテールを大工がモックアップで作り、念入りに纏めてくれた。高塀の5寸角の柾目の柱がなかなか揃わず、木曽といえども材料調達が厳しくなっている現状を知った。道路際の格子戸と2階の出格子は、敢えて繊細な寸法とすることで、伝統的な職種の工房を匂わせ、柔らかい塀瓦で主張が強くならないよう、おとなしく整えた。

<既存家屋側から見る外観>

つづく (前田)