名古屋で進めている茶陶の工房と茶室も、いよいよ竣工に近づいてきた。古い工房と茶室を取り壊しての再構築だけに、かつての給排水管、ガス管の損傷が激しく、これまでさまざまに切り回しをされたインフラを整えるのが急務だった。
<母屋に隣接した工房と茶室>
今回、初めて仕事を依頼した岐阜の建設業者が、殊の外に熱心に取り組んでくれて、請負額以上の仕事で応えてくれている。熱い気持ちをもった方で、仕事帰りに時間を見つけては酌み交わし、たびたび建築談議に花を咲かせている。
<外観を見る>
茶陶という茶の湯に深くかかわる仕事とあって、3階建てながらも数寄屋の柔らかさがにじむように整えてみたが、中でも1階の腰板が大きなポイントだった。どのような材料で応えてくれるか懸念したのだが、彼の地元、岐阜の杉を選別して、見事な杉柾板を入れてくれた。腰板は目板仕舞としたが、そのディテールをモックアップで示してくれながら、細かい納めをきれいに纏めてくれた。
<茶室内部、左官下塗りが続く>
工房は外部の足場が外れ、茶室の方も木工事がほぼ終わって、左官が入りだした。狭い現場なので資材を置くスペースもなく、各下職が互いに気を配り、いかに効率よく進めていくかが大きな焦点だった。茶室の左官は京都の知り合いに頼み、畳も長年お世話になっている京都の職人に委ねた。
<茶室、点前座より全体を見る>
両所とも仕事でお目に掛かるのは久しぶりだったが、先日揃って現場に来てくれて、旧交を温められたのは嬉しかった。茶室の扁額もできてきて、後は竣工を待つばかり。施主の期待に応えられるよう、最後の仕舞まで気を抜くことなく努めていく。
(前田)