上徒士町の家が竣工した。依頼があったのが今から3年半ほど前で、以前この地で設計した住宅をご覧いただいた上でのお話しだった。時間はかかったが、その間にさまざまな話をご夫妻と交わしながら設計を纏め、工事に取り掛かった。30代のご夫妻と2人の子供、4人家族の家である。
<道路より建物を見る>
当初からご夫妻とも木の家を熱望され、明るく開放的な家を希望されていた。建築地は街中からほど近い場所で、商店街が間近に迫る好立地だった。東側に道路が取り付く東西に長い敷地で、道路から奥まってご両親が住む家が建つ。その手前、道路側に家族で住む家を建てたいとの要望だった。
ここは街中とあって準防火地域に指定され、また既存建物が建つ同一敷地内ということもあり、法解釈と敷地の整合性をどのようにつけるかが課題だった。またこの青森は言わずもがな寒冷地であり、その中で、開放的な木の家をどう構築するかに取り組んだ。
<道路より建物全体を見る>
道路に面して3台の駐車スペース、ご両親宅へのアプローチ、北側に自転車置場と勝手口、両親の家との連絡通路などが基本的な要望として挙がった。初めて敷地を見に行った折、ご両親の住まいがとてもよく出来ていることに気付いた。今から60年以上前に建てられた家だが、平面がとても合理的に作られているのと、架構に無理がなく使われている材も良く、まだまだ使える建物だと思った。
<玄関周りを見る>
早速その旨を話しながら、将来的にはこの家を改修して、子供たちが住めるようにということに焦点を当て、全体計画をしたらどうかと提案した。快く了解を得て、その方向性で計画に取り掛かった。こうしてみるとかつての大工の仕事はしっかりしていて、60年程度ではびくともするものではない。昨今は、すぐに建て替えを考えがちだが、家は手を入れて住み続けられるものにしておくことの大切さを、改めて感じさせられた。
つづく
(前田)